英雄伝説 閃の軌跡IV - THE END OF SAGA -

PROLOGUE プロローグ

『──それでは始めるとしよう、リィン』

『世界を絶望で染め上げる、昏き終末の御伽噺おとぎばなしを』

昏黒の闇に、彼はひたすらうずくまっていた──

戻ることのない輝き、帝国にまき散らされた呪い。

いくら悔やんでも悔やみきれず。
いくら問いかけても答えは返ってこない。

大切なものを守れず、取り返しのつかぬ事をした己に絶望し、
“贄”となった運命すらもただ従容と受け入れる。

それが《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーの成れの果てであった。

──そして、世界は終焉に向かって動き始める。

エレボニア帝国という史上最大の軍事国家は
《大地の竜》ヨルムンガンドの名の下に世界を呑み込み始め……

世界もまた、最悪にして最低の最善手によって
巨竜を絡め取り、その首を落とさんと動き始めていた。


その劫火によって宿望を成就せんとする黒き意志と
主の計画のため手段を選ばぬ蛇たちの狙いをりながら。

『──だったらあの人の胸倉を掴んででも
 違うだろう、そうじゃないよって分からせる!』

『それがあたし達にしかできない
 “役目”なんじゃないんですか!?』


──その言葉が、擦り切れた魂に再び火を熾した。

エレボニア帝国、トールズ士官学院《VII組》。

身分や立場、国籍すら超えて集められ、
二代目も加わった曰く付きにして“最高”のクラス。


彼等は立ち上がる──終焉にあらがうために。

彼等は前に踏み出す──光と翼を取り戻すために。

『さあ──“全員”で見届けてやるとしようぜ』

『この最悪で、クソッタレなお伽噺の結末をな』