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■Karisu.A

【タイトル】 星に願いを
【作者】 Karisu.A

「ところで、ヨナ」
青い髪の少女は、今しがたゲームでこてんぱんに叩きの
めした相手に、通信機越しに話しかけた。
「なんだよぉ……」
四連鎖波状攻撃が効いたのだろうか、情報屋の少年は哀
れな声を上げている。
「少し聞きたいことがあるのですが」
「なんだよ、あんたがそんなこと言うなんて珍しいな」
「実はキーアに聞かれたのですがデータベースに見つか
らなくて。……「タナバタ」をご存知ですか?」
「は?」
ティオは手元に置いてあった小型端末を操作して、保存
しておいたデータを展開した。
「「七月七日までに願い事を書いた紙を大量に植物に結
びつけておき、期が熟したらそれを燃やして、煙を空の
女神に届かせる」と」
「何それ、超怖い」
「どうやら重要なキーワードは、七月七日、紙、植物、
この三つですね。日付に関してだけ言えばあと三日後で
す」
「つまり、紙の形状と植物の種類を調べろってことか」
「そういうことです。ですがかなり限られた地域の風習
のようなので、正確な情報を探るのは難しいかと」
その言葉は彼女の思った以上に功を成したようで、通
信機の向こうからヨナが鼻を鳴らす様子が聞こえた。
そして予想通りの台詞が続いた。
「ボクをなめるなよ!あんたが舌巻くような正確な情報
を持ってきてやる!」

三日後、ティオは特務支援課の端末をメンテナンスしな
がら、ヨナが調べていた情報を頭の中で整理していた。
必要なものは大きなササと、長方形に切った紙、そして
紙で作った飾り。
紙は中央広場の百貨店で手に入るだろう。紙飾りは東方
街の、あの風車を売っている店に聞けばどうにか
なりそうだ。
問題は、ササである。
「………何処に生えているんでしょう?」
独り言を呟いたその時、ティオは背後から近付いてくる
気配に気付いた。
「よぉ、ティオすけ。何してんだ?難しい顔して」
「ランディさん」
体格の良い赤毛の男はヘラヘラとした顔を、たっぷり頭
二つ分は小さいであろうティオに近づけてきた。
「あの、ランディさん。ササって何処に生えてますか?

「ササ?生えている場所は知らねぇが……」
その言葉に落胆しかけたティオだが、ランディの言葉は
まだ続いていた。
「ササパンダが持ってるのは見たことあるぜ?」
そうだ、忘れていた。
あのササを持っている魔獣がいた。道理でどこかで見た
と思っていたのだ。
急に真面目な顔つきになったティオを見て、ランディは
首を傾げた。
「どうしたよ」
「実は………」
改めて一連のことを、順序立ててランディに話す。
話を聞き終えた男は、どこか愉しそうに口を開いた。
「だったらよ、ロイドとお嬢に飾り作るの頼んで俺たち
はジャイアントササパンダからササを奪ってこようぜ」
「ジャイアント、ですか?」
「こういうことは何事も大きいほうがいいだろ」
ランディに話したのは失敗だったかもしれない。
そう思いながらも早速エニグマで電話をかける男を、テ
ィオは止めることが出来なかった。

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