■銀の梟
【タイトル】 |
ご都合主義者は手を差し伸べる |
【作者】 |
銀の梟 |
眩い光、気付くとさっきまでいた場所ではなかった
「今何をしたんですか!」
側にいた娘が駆寄る
「いや、俺は何も…」
「どこなのここ!」
それはこっちが訊きたい
「神殿…っぽい」
「雰囲気言ってるだけ!」
そこから、初めの印象とは幾分か違う感じの彼女と推
論の応酬
そしてその最中だった、2人の間を重い風が横切る
「なっ!?」
それは壁を粉砕する、眼は自然とその先を
追う、鎖が見えた
「コ……デ…」
声が聴こえた 振り返ると人影が見える、薄暗くハッ
キリとは認識できなかったが鎖はそこに繋がっている
「えっと、これは…」どういう状況?今、非常に命の危
機に晒されなかったか?何なんだ?解らない事ばかりだ
「逃げるわよ!」
そんな心情などお構いなしに彼女は
手を取り走り出す
「に、逃げるって何処に?」
「知らないわよ!そんなのっ!」
それはそうだ、全く見知らぬ場所なのだから…しかし
「何で逃げるんだ?」
なぜそんな事を言ってしまったのか、自分でもよく解
らない
「馬っ鹿じゃないの?!ああいう防衛システムの大概は
侵入者を追い払うようにできてるの、その場を離れれば
執拗には作動しないはずよ!」
さすが遺跡調査員としての経験か、と思うと同時に、
こんな状況下でも律儀に説明してくれるこの娘はとて
も親切な方なんだと思う、しかし、防衛システム?彼
女には見えてなかったのだろうか?あの人影が、聞こ
えなかったのだろうか?あの声が…
「確かめないと!」
事の首尾を明白にするのだ
「何をグズグズしてるのよ!って、きゃっ!!」
振り返った俺に見えたのは、二度目の追撃を予見させ
るものだった、言うが早いか俺は彼女を抱え込むように
伏せさせる
ドゴォッ!!
大きな衝撃音が響く、が、音はすれども物は無く、い
や、彼の者の得物(ハンマー?)の形状から攻撃地点は
すぐに割り出せた、鎖は天井と繋がっている
「狙ったのか!?」
いろんな意味でそう言った矢先 衝撃で崩れ出した
天井が、天井が崩れ出す基因となったモノを飲み込んだ
「ちょっ、まさかの自滅!?」
こちらとしては一つの危機を脱した事になるのだが、
どうにも…
「ちょっと…いつまでこの状態なの?」
気が付くと彼女を抱き抱えたままの状態である
「うわっと、ごめんっ」慌てて飛び退く
「いいわよ、別に…」
さっきまでの彼女とは打って変わって控え目な物言い
に少し戸惑ってしまった、いきなりは反則だ
彼女はスッと立ち上がりパタパタと服をはたく
「それより今、誰かいなかった?」
なぜだろう自然と足が駆出した
「えっ、ちょっと 危ないよっ」
引止める声も聞かず崩れ落ちた天井を掻き分ける
「来ないで…」
ずっと気になっていた、
あの声を、あの言葉を
「悪いけど、来させてもらった」
そこには傷を負った少女
「…?」
どうしても知りたかった
「来ないか?一緒に」
キミの真意を
手を延ばす、それを少し離れて見ていた彼女は
こう言い放つのだった |