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■ノウツ

【タイトル】 守護騎士の守護騎士による守護騎士の為の渾名
【作者】 ノウツ

「渾名を……変える?」
ケビンから卵サンドをひったくったリースが、サンドを
頬張りながら聞く。
「あぁ。《外法狩り》以外にもやりたいことが出来たし
な。んで総長にいくつか提案してみたんや」
「因みに聞くけど、ケビンのネーミングセンスに期待せ
ずに聞くけど、どんな渾名?」
「《ブラックアロー》とか《蒼い流星》やな」
「……………!!!!」
あまりの驚きに、リースは頬張っていた卵サンドを喉に
詰まらせてしまったようだ。
「前言撤回。流石のネーミングセンス。私には到底まね
できない」
呆れ顔で、リースは卵サンドと共に紙袋に入っていた花
丸ミルクセーキを喉に通す。
「そ、そんなにヘンか? でも総長にも『リース辺り
と相談しろ』なんて言われたしなぁ」
「このミルクセーキ美味しい。どこで買ったの?」
「完全無視かい! ——一緒に考えてくれたら教えたる
わ」
「酷いケビン。飲み物を利用して私をこき使おうってい
うの。そんなケビンは空の女神の天罰を受けてもらわな
いと……ってやっぱりいい。その渾名を私の前で——」
「えぇい! もうさっきのことは忘れてくれ! とりあ
えずリースからいい感じの候補を挙げてほしいんや」
「うーん……仮に私自身に渾名を付けるならば
《食の女神》とか」
むふー、と誇らしげにリースは胸を張る。
「いや、お前の場合『食』よりも『蝕』とちゃうか」
「む、一体どういうことなの」
リースは、卵サンドを持つ手を止める。
「だってお前この間寝ぼけて俺の頭にかぶりついてきた
やろ!?」
「あ……あれはケビンが野菜に見えたから」
そう言いながら、じゅるりとリースはよだれを垂らす。
「だっ、誰がネギや! ドロシーちゃんといいリース
といい……」
「ドロシー? リベールであった人?」
「ああ、リベールで雑誌のカメラマンやってる子でな。
久しぶりにあったと思ったら『ネギ・グラハム』なんて
言うてきたんや」
「もうそれでいいんじゃないの? さっきのより
《野菜戦士》の方がよっぽど」
「頼む。ホンマにそうなってしまいそうで怖い。
——しゃあない。とっておきのを一つ。てか、ここまで
聞いてなんやけど、もうこれにしようと決めてるんや」
「……………………はぁ」
再びリースは、呆れ顔でケビンを見る。
「そ、そない顔せんでも。今度のは大丈夫や! 空の女
神のお墨付きやで!」
「もったいぶらずに早く話して。私は今最高に機嫌が悪
くて早くカルシウムを摂取したい気分なの」
そう言いながら、リースはミルクセーキの空き瓶をケビ
ンにちらつかせる。
「ふふん。これは自信作やで。——天に居る姉を想い超
える。ルフィナ姉さんを超えるって意味や。それで
《天姉想越》ってのはどうや? 俺とリース、二人で姉
さんが目指した場所を超えていく——」
ケビンがそう言うと、リースはケビンに背を向けていた。
「……ミルクセーキ買いに行く」
そう言い残して、リースは紙袋を抱きしめ走り出した。
「おまっ、ちょっ、場所分からんのとちゃうのか! リ
ース! リース!」


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