■T-REX
【タイトル】 |
特務戦隊エニグマフォース! |
【作者】 |
T-REX |
眠らぬ町の奥深く——
一見、何の変哲も無いオンボロビル。
だが、その一室からは。
毎晩狼の遠吠えにも似た叫び声が、
聞こえるとか、聞こえないとか。
導力ネットを利用した端末が喧しく鳴り響く。
俺たちは導力メールに記載されている指令を読み、
頷き合うとその地へと向かって駆け出す。
時間が無い。疾く、風のように走っていく。
一陣の旋風となった俺たちは、
素早く目的地へと辿り着く。
辿り着いた地は——クロスベル大聖堂。
現在は日曜学校の真っ最中。
その和やかな地を恐怖へと変える奴がいる!
俺達はドアを開け放ち、その元凶を見据える。
「許さんぞ怪人キリングベア! 成敗してくれる!」
キリングベアと呼ばれた大男は後ろを見ないまま、
獰猛な獣のような大きな声で叫んだ。
「誰だお前ら!! 名を名乗れ!!」
獣の咆哮のような威圧感にも、俺達は——
決して怯まない!!
「聞きたいなれば聞かせてやろう!!」
俺達は各々を象徴する新型戦術オーブメント——
ENIGMAを抜き放ち、凛とした声で一斉に叫ぶ。
「「「「ENIGMA、起動!!」」」」
掛け声と同時に俺達の身体が光に包まれる。
ものの数秒で、俺達は色とりどりのボディスーツへと。
赤・青・桃・黒というバランスが悪い色合いの、
悪を挫き弱きを助ける戦士。その名も——!
「魂に刻め! 俺達は——!」
ここで各々の決めポーズを欠かさずに。
「「「「特務戦隊・エニグマフォース!」」」」
「お前らがエニグマフォース、か。面白い!」
怪人は振り返り、眼光を煌かせる。
ヤツは獰猛な咆哮を上げながら。
そんなの通り獣のような動きで俺たちに襲い掛かる!
俺たちは各々の武器…
トンファーと導力銃、魔導杖と——
スタンハルバートを握りしめて、果敢に。
巨漢の怪人達へと立ち向かっていった。
・・・・・・・・
クロスベル警察・特務支援課ビルの、
テーブルで食事を取りながら。
「、という夢を見たんだ」
いつもの飄々とした表情のまま。
特務支援課の一員・ランディ・オルランドは、
話に一段落を付ける。
彼の言葉に残りの面々は、なんていうか。
複雑な表情をすることしか出来なかった。
「で、倒した怪人が巨大化して——」
そんなことをお構いなしに喋り続ける彼は、
とてもこの場の中で年長者とは…
「ティオ助が呼んだ巨大みっしぃに乗ってだな——」
とても思えなかった。
ノリノリなランディと冷静な残りの面々、の筈が。
ここでまさかの、伏兵。
「ねーねー!キーアは出てこなかったの!?」
夏の日の花のような、屈託の無い。
爽やかな笑顔を浮かべたまま、少女が。
夢の話に興味を持ってしまう。
こうなると、もう。止まらないわけで。
「そうだなぁ、キー坊は黄色じゃないか?」
その応えにキーアも。
「じゃあじゃあ、かちょーは? ツァイトはー?」
「んー、何色なんだろうなー?」
これは暫く話が続きそうだ、
そう思った特務支援課の3人は。
顔をそろえて苦笑いするのであった。
そんな平和な朝が、たまにはあってもいい。 |