■シエ☆ノホリ慶
【タイトル】 |
Un encuentro |
【作者】 |
シエ☆ノホリ |
「やめてくれっ!」
『見慣れぬ魔獣が現れた。直ちに退治するように。』
まさにその支援要請の対象である手追い魔獣に苦戦する
支援課の間に飛び込んできたのはまだ幼い外見の少年、
そして声であった。
「こいつは…こいつはオレの友達なんだ…。」
少年にはそこをどく気配がない。
一旦話を聞こうと、戦いを中断することで一致した4人
は少年に連れられ付近の林の中に身を隠した。先の少年
の発言を裏付けるように、見れば魔獣は少年にピタと身
を寄せ、懐いているそぶりを見せている。先程戦闘状態
にあったロイド達にさえ敵意を向ける様子もない。
「聞きたい事はいろいろあるけど…まずキミはどこから
来たんだ?」
まず口を開いたのはロイドだった。自分達が警察である
ことを明かした後、問いかける。
「…オレはルーナ。来たのはここじゃないよその国だ。
こっちに来たのはソーロの散歩!」
どうやらソーロというのは魔獣の名前らしい。
「ったく、散歩っつーかむしろ旅行だろ。」
国境越えるなんてありえないと、ランディのため息が漏
れた。
話を聞くと、少年は魔獣と意志を通じ合わせる力を持つ
ようである。今"散歩"を共にしているソーロの他にも
多くの友だちがいること、見知らぬ土地の魔獣でさえこ
ちらの声に耳を傾けてくれさえすれば呼びよせることが
できること。それは一方的な召喚とも違い、主従関係で
はなく信頼関係で結ばれた仲だからこそ成り立つのだと
いう。そしてその力は家族代々受け継がれているのだと
も。
「特殊能力っていうより、これって自然なもんだと思う
ぜ。生まれた時からヤツらとずっと一緒に過ごしてきた
なら当然だろ?」
試しに何か呼んでみようか?
そう言って少年が目を閉じ、口笛を軽く吹くと木陰の影
から小型魔獣3匹がひょっこり顔を覗かせた。
少年の話から一通り状況を把握した上、よその国、散歩
というには規模の異なる表現も気になりはしたものの、
その点において語る様子のない少年の姿にあえて問うこ
とはしないでおいた。
「わかった…。魔獣退治の要請は取り下げてもらうよう
頼んでおくよ。」
但し、今後また手配されないように身を潜めて移動する
こと。そう念を押すことも忘れずに。
「へへっ、ありがと。気をつけるよ。オレもコイツも危
ない目にあいたくないしな。」
「じゃ、また会おうな!」
笑顔で少年と魔獣は去ってゆく。
「不思議な、でもいいこ子ね。」
「魔獣と友達なんてヤツは、会ったのは初めてだな。」
「…今すぐツァイトに会いたくなってきました。」
エリィ、ランディ、ティオが笑顔で少年の背中を見つめ
る中、ロイドだけは険しい表情をしていた。
大型魔獣と信頼関係を築き、魔獣を呼び寄せることの出
来る力…
「ロイド?どうしたの?」
はっとエリィの問いかけで我に返る。
「なんでもない。行こうか。」
あの力を、誰に利用されることもなく過ごしていってく
れ…
「また会う」その時が平穏な再会でありますように…
そう祈りながら歩き出した。 |