梶裕貴:ゲームのシステムボイスを録った時には、本作がどんなストーリーなのかというのを深く知ることができなかったので、今回改めて、初めてキャラクターを演じたなという気持ちがしています。緊張感と責任感を持って演じさせていただきました。
梶裕貴:これ以上ないほどの正統派主人公なキャラクターなんだなと思いました。正義感に溢れていて、爽やかで……。ファンタジーの世界において、誰もが魅力的に映る青年がアドルなのかなと、演じてみて改めて思いました。
近藤季洋:実は梶さんにアドル役のオファーを出したのは僕なんです。いろいろ経緯はあるんですけど、まったく新しい「セルセタ」を立ち上げようというのと、PS Vitaという新しい機械ですから攻めないといけません。もちろん過去のものも大事にしたいんですけども、新しいお客さんに向けた要素が入ってきてもいいのではないかと思いまして。
それとアドルが一回大きく若返るので、彼を捉えなおす必要があったんです。『セルセタの樹海』のアドルっていうのは冒険を始めて初心者の頃なんですね。後に彼は“稀代の冒険家”と呼ばれることになりますが、このセルセタのエピソードを彼が“冒険家”と名乗るきっかけにしたかったんです。なぜ記憶喪失なのかっていう話があるんですけど、一度記憶を失うとアドルは自分がどういう人間なのかを追体験していかないといけないので、その追体験の過程で新しいお客さんもアドルがどういう人なのかをわかっていただけると思うんです。それらを踏まえて梶さんにお願いできれば、ということになりました。
梶さんのお名前を知ったのは「ファミ通アワード」という賞がありまして、僕らは『碧の軌跡』で賞を頂いて出席していたんです。その時に梶さんも受賞されていて、帰って調べてみたら今回のアドルにピッタリの声だなと思いまして、スタッフに相談したら「合うと思います」と一致するところがあったので、お願いしてみようと。

梶裕貴:そういういきさつが……!(笑) なぜ僕を選んでくださったんだろうというところは、確かに気になっていました。そして、皆様に長く愛されている作品である分、途中参加は難しいだろうなという想いがあったので、そう言っていただけると嬉しいですし、プレイヤーの方々にも、新しいものとして『セルセタの樹海』を受け入れていただけたら嬉しいです。

近藤季洋:「お願いしてよかった」と思いましたね。アドルは脚本を書いていても担当が迷ってしまうところがあるんですよ。それはプレイヤー=アドルっていうところから『イース』は始まっているので、ほとんど喋らないし喋らせると「思っていたアドルと違う」と言われることも多いです……だから、どの方が演じても難しいところですし、脚本もアドルがどういう行動をとるかっていうのは実は悩むんですね。それでも、お人好しとか正義感が強いとか、皆が何となく持っているアドルのイメージがある。中性的な優しい雰囲気であったり、ちょっと少年っぽいところもそうですね。その当たりの雰囲気がまさしく梶さんのアドルで表現されているのではないかな、と感じました。
梶裕貴:記憶を取り戻しつつ進むというストーリーなので、『イース』全体のアドルとしては、導入部分という印象を受けます。シリアスなエピソードの中にも、デュレンとのたわいもない会話や笑えるシーンがちょこちょこあるので、そういった部分を楽しんでいただければと思います。
梶裕貴:限定版のドラマCDということで、手に取って下さった方はきっと『イース』への愛情が強い方だと思います。なので、その分責任感は感じますが、先ほど社長もおっしゃっていたように「新しい形として」という見方も含めて楽しんでいただけると、よりゲームの本質を楽しんでいただけるのではないかと思います。出来る限り良いものにするお手伝いとしてアドルを演じさせていただいたので、ゲーム本編と一緒にドラマCDも聞いていただけるととても嬉しいです。よろしくお願い致します。

近藤季洋:まずは今回「アドルを再構築したい」ということから『セルセタの樹海』の開発が始まっていまして、声を新しい方にお願いするというのはその段階からあった話なんですね。その時には具体的にどなたにお願いするか決まっていなかったんですけど、梶さんにお会いしたら、ご本人がアドルっぽい方で「これは間違いないだろう」と(笑)。ゲームのほうも今までにないシステムを取り入れてますし、全く新しい『イース』が生まれたと実感しています。梶さんは僕らのイメージしていた新しいアドルを演じきってくださってますので、皆様に新しい『イース』と新しいアドル、そして僕らの新しいチャレンジを是非ご覧になっていただければなと思います。