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■えみり

【タイトル】 続・重剣流特訓法(その7)
【作者】 えみり

「3人とも、付き合ってもらって悪かったな」

 アガットはエステルたちに礼を言った。
特にエステルとヨシュアは正遊撃士として、仕事を
抱え多忙な身だ。
時間を作るのは容易ではなかった筈である。

「いえ、こちらも良い経験になりました」
「うんうん。
それにしても、みんながあんなに強くなっている
なんてね!
本当に楽しかったわ!」

 ヨシュアもエステルも嬉しそうに言った。
彼らにとっても、後輩遊撃士の成長は楽しみで仕方が
ないのだ。

「もう…お礼ならティータに言ってちょうだい。
あの子がどうしてもっていうから…」

 レンが話を続けようとした瞬間、ヨシュアがレンの
口を塞いだ。

「レン…!
それは内緒にしておく約束だったじゃないか…!」

 ヨシュアは焦って制するが、レンの目元は悪戯っぽく
笑っている。
明らかに確信犯。
裏事情を暴露されたアガットの表情が歪む。

「(どこでティータちゃんに話したんだろうな?)」

「(バカ、兄貴に聞こえたらどうすんだ…!)」

 耳打ちしてきたレイスを慌てて止めたディンだが、
時既に遅し。

「お前ら…何か言ったか…?」

 ものすごい剣幕でディンたちを睨むアガット。

「い、いや…何も…」

 苦笑いするレイス。
何かを覚悟したようなディン。
その2人を睨みつけるロッコ。
この先どうなるか、3人にはある程度予測が付いた。

「…十分休憩は取れただろう。
お前ら、この要塞を30分以内に出ろや。
もちろん途中の魔獣は全部倒しておけよ。
俺たちは後から追いかけるからな」

 アガットがディンたちに冷たく言い放つ。

「や、八つ当たりじゃないっスか!」

「うるせぇ、さっさと行け!
それともこの重剣を食らいたいか!?」

 ディンの抗議も虚しく、アガットの手が背中の重剣に
伸びる。

「ちくしょう〜!」
「冗談じゃねぇ〜!!」
「…今に見てやがれ!」

 口々に文句を言いながらも、ディンたちは要塞の
出口へ向かって駆け出した。

正遊撃士への道はまだまだ長く険しいようだ。


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