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■阿綱

【タイトル】 ヨシュア戦記外伝 「白い熊のマドリガル 前編」
【作者】 阿綱

皆さんこんばんは。ヨシュアです。
今回は僕の活躍ではなく、ある熊のもたらした悲劇に
ついて語りたいと思います。

学園祭の劇の役者を頼まれた時、僕は嫌な予感がした為
その役を泰斗流の達人でありAクラスの遊撃士である、
ジンさんに頼みました。
これが多くの不幸を生む事になるとは、この時の僕は
想像もしませんでした。

-舞台前日-

ハンス
「ささ姫、こちらへどうぞ」

舞台の練習中、ハンスに案内され、白い衣装に身を
包んだ一匹の熊(ジン)が現われた。

ゴゴゴゴゴ‥(大気の震える音)

その異様な姿に、皆は何も言えなかった。
‥何も言いたくなかった。

白い熊のセシリア姫(ジン)
「頼むから何か言ってくれよ、このまま放置されるのは
辛いものがあるぜ」

ユリウス(エステル)
「何か違和感ありまくりよね」

オスカー(クローゼ)
「はあ、かなりキツイです」

ハンス
「あんた自重した方がいいぞ、何も知らないで、
町をあんたを見かけたら、俺、思わず銃で射殺する
かもしれないから」

白い熊のセシリア姫(ジン)
「正直な感想ありがとよ、全然うれしくないけど」

この時点で止めておけば、被害は最小限ですんだの
だが、劇は強行された。

■阿綱

【タイトル】 ヨシュア戦記外伝 「白い熊のマドリガル 中編」
【作者】 阿綱

-舞台当日-

女性の声
「大変お待たせしました。
只今より生徒会主催の史劇「白き花のマドリガル」を
上演します。
心臓の弱い方の視聴はご遠慮下さい。
繰り返します、心臓の弱い方の視聴はご遠慮下さい!
これは脅しではありません!
いいのですね?本当にいいのですね?
では、皆様最後までごゆっくりお苦しみ下さい」

スポットライトが一匹の熊(女装したジンさん)を照ら
しやがりました。
そこには美しい白き衣装をまとった、美しくない達人
の姿がありました。
人々は‥その姿に‥恐怖した。

侍女
「姫、こんな所に入らしたのですか、
あまり夜更かしされてはお身体に障りますわ」

白い熊のセシリア姫(ジン) 
「いいのです、私など病にかかれば、そうすれば、
このリベールの火種とならずに済むのですから」

侍女
「何を仰います!姫様は良き旦那様と結ばれて
王国を統べる方なのですから。」

白い熊のセシリア姫(ジン)
「私結婚などしません」

侍女
「どうしてでございますか?
あなたには勿体ない位、
立派な婚約者が二人もいらっしゃるのに‥。
これを逃せば金輪際結婚などできませんよ」

白い熊のセシリア姫(ジン)
「あんたが失礼な奴だというのは、
私よ〜く知っていますわ。
ああ、オスカー、ユリウス、
私はどちらを選べばいいのでしょう?
いっそ両方選びましょう。
うん、そうしましょう!」

-観客席-
メイベル市長
「まあ、もしやあの熊姫野郎はジンさんで
はありませんか?
男女の配役が逆とは‥
ジルも余計な事を考えましたわね」

リラ
「はい。ただ他のメイドの方はともかく、
ジン様はかなり‥」

-再び舞台-
ユリウス(エステル)
「なんか強烈な悪寒が‥。
覚えているかオスカー?
幼き日、この路地裏を駆け回った日々の事を。

オスカー(クローゼ)
「勿論だ、忘れたくても忘れられない‥
君とセシリア様と過ごしたあの悪夢‥
失いたい自分の汚点だ。
迫り来る戦車のごとき威圧さと
洪水のごとく勢いを備えた妖女
セシリア様は正に自分達にとっての大凶だった」

ユリウス(エステル)
「その醜悪さは日増しに磨きをかけ、そして、
姫との結婚はもはや避けられぬ所まで来ている」

オスカー(クローゼ)
「そして‥ああ、なんという事だろう。
その結婚の矢面に立たされてるのが、
他ならぬ我々の存在だとは!」

-観客席-
マリィ
「きゃあきゃあ!、お姉ちゃんたち悲劇!」

-再び舞台-
ユリウス(エステル)
「久しぶりですね、姫。
今日は姫にある事をお願いしたく参上しました」

白い熊のセシリア姫(ジン)
「お願い‥ですか?」

ユリウス(エステル)
「私とオスカーの決闘を許していただきたいのです。
そして敗者には‥
姫の夫を免除されるという幸運をお与え下さい」

白い熊のセシリア姫(ジン)
「!!!」

親友同士だった二人の騎士はついに決闘する事に
なりました。

熊の嫁となるのは一体どちらか?!


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