■ミツコシ・ハルヤ

「次はヨナの所に行くか。元気か心配だしな」
　場所は住宅街。今日も支援要請のかたわら街の巡回を
していた。
「ロイドさんは過保護ですね。エリィさんにとっての
ジョアンナさんと同じです」
　俺の提案にティオが呆れた顔をする。
　ティオがジョアンナさんと比較しているのは、さっき
までエリィの実家を訪ねていたからだろう。ジョアンナ
さんの心配性は相変わらずだった。
「そんなことは……。なあエリィ？」
「確かに、世話焼きという点では二人はそっくりね」
　助けを求めたつもりだったが、エリィもティオに賛同
してしまったらしい。

　部屋へ入ると、ヨナが欠伸をして目をこすっていた。
「昼だってのに起きたばかりか？　不規則な生活は
体に毒だぞ」
「余計なお世話だっての。用がないなら来るなよな」
俺の言葉に伸びをして答えるヨナ。そこへティオが
口を挟む。
「無駄ですよロイドさん。人の忠告を聞けないから、
こんな所で隠れて住む羽目になってるんですから」
「くう、ずけずけと」
二人の口論（ティオ優勢）の様子を眺めていると、
突然の声が室内に響いた。
「なんですかここ！？」
全員がいっせいに振り返ると、ジョアンナさんが
入口に立っていた。
「ジョアンナ？　どうしてここに」
「あのその……」
困惑と驚愕からか、言葉が続かないジョアンナさん。
落ち着かせて話を聞くと、俺たちと別れてすぐに昼食を
作り終えたので、料理を持ってきたとのことだった。
ヨナを紹介すると彼女は室内を見渡した。そして
ふとテーブルの上で視線を止めると、おもむろにヨナに
近づいた。
「あなたが、噂のピザの人ですね？」
「え？」
ヨナは迫力に押され後ろへ下がる。
「お昼もピザを食べるつもりでしたか？　栄養が偏り
ますよ」
「余計なお世……」
「少し包んできましたので、食べてください」
弁当箱を押しつけるジョアンナさん。ヨナは勢いに
負けたかおずおずと受け取った。
「ティオすけのことといい、ヨナ公は尻に敷かれる
タイプだな」
「何を言ってるんだ、何を」
ランディのくだらない意見は、適当に流すことに
した。

「この辺り、掃除しちゃいますね」
「動かすな、コードが……って、あーちょっ、画面
消え、あああ」
扉をくぐると、ヨナの盛大な叫びが耳を震わせた。
「あ、皆さんお疲れ様です」
何事もなかったようにジョアンナさんは挨拶をした。
あの日以来、ジョアンナさんは時折ヨナの所へ通い
面倒をみるようになった。エリィ曰く、元来の世話焼き
気質がヨナへと向いたのでは、とのこと。
「目を離すとすぐに自堕落な生活に戻りますから、油断
できません」
困り顔でヨナに向くジョアンナさん。だが心なしか
その声はいきいきとしている。
「一時間分を返してくれぇ」
「こまめにセーブしないからです」
落ち込むヨナにティオが冷静な指摘をする。
「今日もクロスベルは平和だねぇ」
「それだけは確かだな」
ランディののほほんとした意見に、肩をすくめながら
も同意した。