■星野ソラ
【タイトル】 |
恋というもの・三巻(2) |
【作者】 |
星野ソラ |
アリッサには付き合っていた男子がいました。
名前はウィル、彼女の同級生でした。
いつも彼女は彼の傍におり、
彼も彼女の傍にいました。
そんな彼は武術が好きで武術大会には
アリッサと一緒に見に行きました。
彼は少年のように興奮し、
彼女から聞くにいつも
『やっぱりこの大会を見ていると
僕にも闘志が燃えてくるよ!』
っと言っていたんです。
「あ!」
そういうことか…昔の彼氏と
アントンの言葉が偶然にも一緒だったのか。
「でも、昔の彼氏の言葉で気を失うのか…?」
「実はこの先が本題なのです——」
それは、去年の事でした。
アリッサとウィル君は一緒にカルバード共和国に
長期休みを使って旅行をする計画を立て、
旅行に出発しました。
ですが、乗っていた飛行船がエンジントラブルで
墜落し、大惨事になりました。
アリッサは重体で助け出され、
墜落付近であったクロスベル自治州の
医科大学で治療を受けました。
意識は戻りましたが……
足はもう自由に歩く事ができませんでした。
そして彼氏であるウィル君は……。
飛行船や墜落付近で発見されず、
行方不明になりました……。
「………」
彼女の足がうまく動かなくなったわけは
そういうことだったのか……。
そして彼氏ウィルの存在は
大きいかったのだろう。
彼の言葉は彼女の心に響いていたから
逆にトラウマとなってしまったようだ。
もしそうだとしたら、
アントンと付き合っている
彼女の目的はもしかして……。
そう俺が考え込んでいると、
突然、病室の扉が開き、
俺とクローゼさんは驚いてそちらを向いた。
「……アントン」
「アントンさん!?」
「………」
アントンは何も言わず、
突然入り口に向かって走り出した。
「おい!アントン!」
……くそ、アントンも気が付いたらしい。
「クローゼさん!
アリッサのことをよろしく頼む!」
「は、はい!」
俺は見えなくなったアントンの後を追った。
つづく |