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■セト

【タイトル】 赤いお人形
【作者】 セト

これはある日クロスベルで起こった小さな出来事です。

「ただいまー」
というロイドの声と共に支援課のビルの扉が開く音がし
た。
するとすぐさま
「おかえりー」
パタパタと足音と共に明るいキーア声が響きすぐさまロ
イドの胸に飛び込んだ。
「ただいまキーア」
そう言うとロイドは優しくキーアの頭を撫でた。

ふとキーアはロイどの手に赤いドレスの女の子の人形が
在るのに気付いた。

「ねーねーその人形なーに」
とキーアが不思議そうに訪ねる。

「ああこれかい、実はパトロールの途中で拾ってね、一
通り聞いて回ったけど持ち主が見つからなかったから支
援課で落し物として一旦預かることにしたんだ。」

「そうなんだ」
そう言ってキーアはその人形をじっと見つめた。

「それよりキーアお腹が空いたでしょ晩御飯にしましょ
うか。」
そうエリィが言うと、

「うん」
そうキーアは満面の笑みで答えた。
そして食事が終わり、みんなが床に就いたころ。

ふとキーアは何かに呼ばれている様なきがして目を覚ま
した。
そして一階に行くとそこにティオの姿があった。

「あれぇ、ティオ何してるの?」
そうキーアが聞くと、

「ああキーア、実はこの人形がちょっと気になりまし
て、」
そう言うとティオは机の上の人形に視線を向けた。

「お人形?」
そう言ってキーアも人形に視線を向けると、

「お願い・・・連れて・・・行って。」
突然人形から声が聞こえて来た。

突然のことにティオは言葉が出なかった。

「ねぇ、何処に連れて行って欲しいの?」
キーアは怖がることなく人形に聞きました。

「大・・聖堂の・・・墓・・地に・・お願い」
そう人形が答えると、

「ねぇ連れて行ってあげてよう。」
キーアはティオの顔をじっと見つめた。
その視線にティオはうっとたじろぐと、少し考え、

「わかりました、連れて行ってあげましょう」

そして二人はその人形を連れて大聖堂の墓地に行くと、
一つのお墓の前にたどり着きました。

すると、人形は光に包まれ言いました。
「ありが・・とう、やっ・・と会え・・た・・・私の大
事・・なお友・・・達」

すると人形は二人に向かって、

「ありがとう」

そう言うと人形から光は消えもうしゃべることはありま
せんでした。

するとキーアは空を見上げて
「バイバイ」
そういって手を振りました。

次の日ティオは夜に起こった出来事をロイド達に話し、
人形について色々調べていると聖堂のシスターからある
話を聞きました。

数年前その人形をいつも肌身離さず持っている女の子が
いて人形をとても大事にしていました。だけどある日女
の子は人形を無くしてしまいとっても悲しんでいまし
た、そして結局人形は見付からないまま、その女の子は
病気で亡くなってしまったそうです。

きっと人形もその女の子に会いたくて会いたくて仕方が
なかったのでしょう。

そして今その人形は、

「おはよう」
キーアは棚の上に向かって言いました。
そこにはまるで安らかに眠っているような赤いドレスの
女の子の人形がありました。


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