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■チイか

【タイトル】 繋ぐ腕時計
【作者】 チイか

おじいさん と いっしょに ちくたっく ちくたっく

「またその歌歌ってるぅ」
「デリシャって他に歌知らないのかよ」
デリシャと呼ばれた少女は肩を竦めました。
「いーの。これが一番好きなんだもん」
開いていた本を仕舞い、茶々を入れてきたエリックと
メルトから彼女は去っていきます。
彼女の左腕には細く輝く、少女の腕には似合わない
金色の腕時計が在りました。本を抱え、デリシャは金色
の腕時計を擦りました。
常に身に着けることで、昨年死んでしまった
優しかった祖父のことを思い出すのです。
「嘘吐きデリシャーまだ祖父の夢は見るのかなぁ」
からかわれても信じない奴は信じない。
腕時計を付けて寝ると、夢に祖父が出てきて何か言い
たげに口を開くのです。彼はデリシャに何か言うのに
デリシャは何も解らない。毎日、祖父に会うために寝る
時間も増えています。
今日もこれから寝ようと思いました。
その事をエリックとメルトの兄弟は嘘と言うのです。
子供、とも言われました。
抱えた本の中に生きている少年のように、私も自分の
話を信じてもらえないんだ。
でも何時かきっと、解ってくれる。
この本の中の少年のように。

『魔女に一緒に来てもらって、』
本の中の少年は一つ決心を決めて夜の森に魔女を探し
に行くのです。
デリシャも一つ決心しました。
夜、エリックの部屋まで行って、彼の手にこっそり
この腕時計を付けようと思ったのです。
デリシャは家を抜け出して、夜の村を歩きました。
空の月が少し笑っていて怖かったのですが
デリシャは震える唇を噛んで野を超えました。
エリックの家は昔何度も来たので、彼の部屋にあっと
いう間に着きました。
やっぱりです。ずぼらなエリックの部屋の窓はいつも
鍵が開いてるのです。
エリックは布団に潜って寝ていました。
「これを付けて……」
金色の腕時計をエリックの腕に付けようとします。
その瞬間でした。

「ん……?」

 エリックが目を覚ましてしまったのです。

「……でりしゃ……?」
エリックはデリシャを見るや否や、
「お前、何してんだよ。まだ夜だぞ!」
デリシャは見つかった時の対処を何も考えていなかっ
たので身を竦めることしか出来ません。
エリックは側に転がっている金色の腕時計に気付きま
した。
「お前、まさか……馬鹿野郎!こんなもののために夜を
出歩くんじゃねぇ!」
こんなもの、と言われてデリシャの頭の中で何かが
音を立てて切れました。
「何よ、信じてくれたって良いじゃない!」
デリシャは入ってきた窓から駆け出しました。

 以前はこうでは無かったのです。祖父がいた頃は皆楽
しく遊んでいました。祖父が亡くなってデリシャは変わ
った、と言われました。
でもデリシャは、変わってしまったのは皆だと
攻めました。


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