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■蓮華

【タイトル】 セピス、売ります。
【作者】 蓮華

 ある晴れた日のこと。
 リベール王国の首都グランセルでは、なにやら怪しい
男が手に箱を持って歩いていた。
「えー、セピス、セピスはいらんかねー?」
 その男こそ、元ルーアン市長のダルモアだ。
 現在は保釈中で、再起をはかりセピスショップを立ち
上げ、商売をしている。
「おっさん、何やってんのー?」
「その髪型、だっせぇー!」
 遊んでいる子供たちが、ダルモアを指差して笑いなが
ら、かけていった。
「(くそっ!私だって、好きでやっているわけじゃない
んだぞ!あの小娘達と、あの坊主のせいで!今に見てお
れ、ぎゃふんと言わせてやるー!!)」
 その小娘の一人が、リベールの次期王女のクローディ
ア・フォン・アウスレーゼである事を、彼はまだ知らな
い。というか、気づいていない。
「あの〜・・・・。」
 そのとき、遠慮がちな声がダルモアにかけられた。
 さっと、営業用スマイルに切り替え、後ろを振り向く
ダルモア。
 これは習得できたのに、子供達のからかいを受け流す
ことができないのは、謎である。
「あの〜、セピスを売って頂けませんか?空のセピスを
100個。」
 そういったのは、かわいらしい少女だった。真っ赤で、
ゴーグルのついた少々変わった帽子から、きらきらと輝
く金髪がこぼれ出ている。青く、大きな目に愛らしい口
元。見るものを癒してくれそうな少女だった。
「あ・・はいはい!空のセピス100個ですね?900
0ミラになります。」
 ハッと、われに返り値段を言った。
 少女は腰についている緑色のポーチからきっかり90
00ミラを出して、ダルモアに差し出した。
 ダルモアは布の袋にセピスを入れて、「どうぞ」と差
し出した。
 少女は笑顔で、「ありがとうございます!」と言うと、
帽子の後ろについた帯をひらりと翻し、人ごみにまぎれ
て消えていった。その姿を見送るダルモア。
「・・・よしっ!がんばるぞ!」
 気合を入れなおしたダルモアは、セピスの入った箱を
抱えなおして歩き出した。
 
「よし、よくやった!これで実験が続けられるわ!」
「ねぇ、お母さん。ほんとによかったの?」
「何が?」
「だってあれ、偽札でしょ?」
「・・・・・。」
「お母さん、やっぱり返してこようよ。」
「いいのよ、ティータ。すべては研究のためよ。」


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