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■神楽風香

【タイトル】 キーア、にっきかいてるの
【作者】 神楽風香

「あれ? かちょー なにかいてるの?」
「ん? これはな『勤務日誌』というものだ。めんどう
なんだが書かないとうるさいんだ」
 ジィ〜と見つめるキーアに、
セルゲイはこう口を開いた。
「なんだ? 書きたいのか? キーア」
 コクンと頷いたキーアに、セルゲイは本棚の隅から
使われてないノートを手渡した。
「だったら、これに書くか?」
「うんっ!」

 このひからキーアは、にっきをかきはじめました

 クロスベル はれ
きょう、ロイドとエリィとさかなつりにいきました
はやくおきてエリィとおべんとうもつりました
おっきなおさかなをつるために、キーアはおてづだい
『かかったっ!』
ロイドがさんだときが、キーアのでばん
おおきいこえでロイドをおうえんしました
でも、おさかなはつれませんでした
キーアは、ガッカリしました
でも、ロイドはエリィとおはなしながら
ニコニコわらっていました
う〜ロイド、エリィとばっかおはなしして……
キーアつまんないっ!!

 クロスベル くもり
きょう、ランディとティオがケンカをしました。
ツァイト、ずぅ〜とそとでおしごとしてもらうって、
そんなのやだっ!
キーアはんたいっ!はんたいっ! 
はんた〜〜〜いっ!
だって、ツァイトのフワフワもこもこ、
キーアだいすきだもんっ!
ツァイトのそばでおひるねできなくなっちゃうなんて
ぜったいヤダッ!!
『ばんけんに、キーアのごえいやくとしてのせきむは
どうするんですか?』
ティオのことばにキーアだいさんせいっ!
ぜぇ〜〜〜たい、そしするんだからっ!

 ………………
「キーア。
こんなところで寝ちゃダメだって言ったのに」
パトロールから戻ったロイドが、ソファの上で
眠ってるキーアの姿を見つけた。
起さないようゆっくり近づくロイドに、
エリィが小さく声をかける。

「ロイド。起さないように気をつけて」
「お嬢、ロイドに任せようぜ。キー坊起しちまう」
「そうですね。この頂いたクッキーとジャムは、
後のお楽しみに取っておきましょう」

 と、そんな中でテーブルの上に開かれたノートが
ロイドの目に入った。
「これ……キーアが書いてる日記なのか?」
吸い込まれるかのように手に取ったロイドの顔が
幸せな笑顔に変わる。
それを見た他の3人もそのノートを覗き込んだ後、
ロイドと同じ幸せに満ちた笑顔が浮かんだ。

 クロスベル すっごくいいてんきっ!
キーアね、みんなにあえてよかった。
ロイドもエリィもランディもティオ、
ツァイトにかちょー
エステルにヨシュアにシズク……
このまちのみんな
みんな、みんなだいすきっ!
ずっと、ずっと……みんなといっしょにいたいな。

■神楽風香

【タイトル】 金色のソレイユ
【作者】 神楽風香

 僕は、死ぬのか。
 それなら、それでかまわない……疲れた。
 うっすらと見える星の中で、一際強い輝きを見た。
 それから、次に僕の目が捉えたのは天井だった。
 それと、何かを作っているのかコトコトと煮る音。
 
 「よかった。気がついたみたいね」
 やがて僕の視界に入ってきたのは、僕と年が同じ
ぐらいの女の子だった。
 「びっくりしたわ。急に茂みから飛び出して来た、
と思ったら、いきなり倒れ込んだんだもの」
 ニコニコと笑いながら語りかけるその子に、
僕は身体を起こしながら苛立ちをぶつけた。
「どうして、放っておいてくれなかったんだっ!」
 女の子は、びっくりしたように瞳を大きく見開いて
僕を見つめていた。
 当たり前の反応が僕には逆に癪に障った。
 「……一応、お礼は言っとく。『ありがと』」
 「ダメよ、ちゃんと寝てなきゃ」

 そのままベッドから降りようとした僕の身体を
女の子は力ずくで押さえつけた。
「っ! は、離せよっ!!」
「一口でもスープを飲んでくれたら、
離してあげる」
「……飲んだら、出てくからな」
「そっ。その折れた片足で、
どこまで歩けるのか。楽しみだわ」

 不敵に笑いを浮かべた女の子の言うとおり、
僕の片足は昨日の戦闘で折れていた。
立ち上がれそうもない。
僕は、ギリギリと奥歯を噛み締めた。
「でも、そんな反応を返すんなら大丈夫そうね。
良かった」
柔らかく微笑んだ女の子に、
僕は目を奪われる。
その時になって初めて気がついた。
僕の反応を見ようとして、
ワザとそう振舞っていた事に。

そして、僕は女の子から差し出された
あたたかいスープを一口含む。
口の中に広がる何かに僕の心は……
震え、涙を流していた。


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