■白金千乃
【タイトル】 |
少女と機械と少女 |
【作者】 |
白金千乃 |
賑やかな音が響くツァイスを、ティータは今日も駆け回った。
「あの」
「はい?」
控えめにかけられた声に振り返る。
そこにはティータより少し年上らしき少女がいた。
「工房の見学がしたいのですが、どこへ行けばいいか分からなくて」
自分はともかく目の前の子が工房見学、と聞いてティータは少し驚いた。
しかし、同年代の女の子が工房に興味があることが嬉しくもあり。
「あのあの、私工房でお手伝いしてるので、よかったら案内します!」
ティータはそう進言した。
外国から来た少女ギーゼラは、独特の雰囲気をしていた。
服や所作からは上品さを感じ。
表情に乏しい様だったが、それも神秘的に感じた。
そして、機械に詳しかった。
「なるほど、それで小型化が可能なんですか」
「ここは一番苦労した部分みたいです」
導力機について年の近い子と話が出来ると思っていなかったからか、ティータは嬉しく感じていた。
見学を終え工房を出て、ティータは勇気を出してみた。
「あの、よかったらお友達になってくれませんか!?」
ギーゼラは無言で、しかし少しだけ困ったようだった。
無理を言ってしまったか、とティータが謝ろうとした時。
「ギーゼラ様、迎えに上がりました」
「クラウス」
現れた青年がギーゼラにそう言う。
その後ろにも、大勢の人がお辞儀していた。
自体を飲み込めていないティータに、ギーゼラは説明した。
「バッハシュタインという名を聞いたことは?」
「あ……確か外国のおっきな会社で……」
生活用品中心の民間向け導力機を造る会社。
思い出してティータは気づいた。
「も、もしかしてギーゼラさん、そこのお嬢様……」
「いえ、彼女は社長です」
「そーなんですか……ええ!?」
「はい。彼は私の秘書です」
クラウスの言葉にティータは更に驚く。
申し訳なさそうにギーゼラが目を伏せる。
「立場上自由は利きませんし、子供らしくもありません」
今までにも同年代の友人はいなかったのだろう。
自分と友達になっても、つまらないのでは。
そう思い、ギーゼラは引け目を感じたらしい。
「それでも、ギーゼラさんとお友達になりたいな」
「え……」
ティータの言葉に、ギーゼラは顔を上げる。
「ギーゼラさんとお話するのすごく楽しかった。一緒にいるとすごく楽しいよ」
私なんかがお友だなんて、図々しいかもしれないけど……」
「そんなことは……ティータさんは、気にしないのですか?」
「私は……立場が違っても、お友達にはなれると思う」
そう、あの子の様に。
ギーゼラとはまた違うお嬢様のような少女を想い、ティータは微笑んだ。
ギーゼラは少し考えて、クラウスを見た。
クラウスはそれを受け、無言で目を閉じる。
「ティータさん、これを」
「え?」
「私の家の住所です。お手紙なら、遠くても大丈夫だから」
「私も、ティータさんとお友達になりたい」
「本当!?」
「はい。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ!」
互いに頭を下げて、ふと視線が合う。
そして、どちらからともなく笑った。 |