■凛
クロスベルの闇を取り除いてから、さらに1年。
色々な壁を乗り越えてきた、特務支援課。
出発してから4ヵ月後のあの出来事は、
今でも、鮮明に覚えている。
エステルやヨシュア、レン。
リベール王国に帰っても頑張っているようだ。
時々届く手紙から、元気が伝わってくる。
「気を付けて行ってきてくれたまえ」
場所はクロスベルの空港。
ディーター市長に見送られるロイドとランディ。
「はい。レミフェリア公国で行って、
最新医療技術を詰めた薬の調達ですよね」
「その薬で、病気で困る人々を多く救う…。
相変わらず立派ですねー」
あれから特務支援課は成長を認められ、
支援要請も、行動範囲も広くなった。
外国に出ることは本当に特別なことだったが、
今では近隣の国から、要請がある時も。
この場合大人数を必要とする内容でなければ、
1stクラスを得たこのコンビが出動する。
今回向かうのは、医療先進国レミフェリア。
話では聞いていたが、実際に行くのは初めてだ。
「君たちも警察学だけでなく、
医療技術も学んできてほしいのだよ」
「あはは…、努力します」
「確かにあると便利だが、
今は本職のことで精一杯でしてね。
あれこれ詰めるのは正直厳しいッス…」
市長の輝く歯を見て、2人は苦笑いをした。
「うむ。どんなことでも、
私は君たちに期待をしているぞ。
これは、約1年前の気持ちと変わらない。
君たちのやり方で貫いていきたまえ」
「…はい。ありがとうございます」
「ありがたいお言葉ッス」
2人が会釈をすると、アナウンスが流れる。
出発時間であることをお知らせした。
そのまま2人はロビーを抜け、出発の準備をする。
「今日は良い天気になりそうだな」
「風もないし気持ち良いね。
あっ、ランディ、あれかな?」
出発ゲートを見つけた。
時間前だけあって、たくさんの人が並んでいる。
ちょうどゲートを通ろうと思った時、
横から来た人とぶつかりそうになり、
ロイドは大袈裟に避けてしまった。
「おっと。これは失礼」
「あ、いえ……」
自分より少し背の高い男性。
だが、放たれているオーラがまるで違う。
はっきり言えば、普通の人ではないということ。
カンの鋭いロイドなら、すぐに分かった。
綺麗な黄金の髪をしていて、目から離れない。
相手もこちらが見てることに気付き、にこりと笑う。
「ロイド?」
ランディに声をかけられて我に返り、
2人は少し急いでゲートを潜った。
「…クロスベルの警察かな?
しかし、もう既に面白い予感がするよ。
クロスベルの噂は聞いていたけど、
これは帝国と同じくらい、楽しめそうだ」
「…あまり目立ったことはするなよ」
「あははっ、分かってるよ、親友」
ゲートの向こうは、風が吹き抜ける。
新しい場所へ行くことは、冒険と同じ気持ち。
そうだ、仕事であるということも忘れずに。
「怖いか?」
「…何言ってるんだ。これから、だろ?」
1stクラスのバッジが光る。
また、新たな風が吹いた気がした。 |