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■ふぁるこまち

【タイトル】 ギルバート・スタイン著『謝罪論』
【作者】 ふぁるこまち

 対人関係において失敗をしたことがないという人間は
存在しないだろう。
 極めて残念なことだが、パーフェクトを自負せんとす
る僕ですらも、苦々しい失敗、忘れたい屈辱、若さゆえ
の過ちの数々を経験してきた。
 失敗という災厄は誰にでも降りかかるものなのだ。
 だが!
 だがしかし!
 その災厄に見舞われたとしても、茫然としてしまって
はならない。
 実は、その失敗は乗り越えることができるのだ!!
 現に僕は、それらを乗り越え、エリートとしての輝か
しい出世街道をひた走っている。
 ふふ……。
 ふははははは……。
 知りたいか?
 知りたいだろう?
 僕が如何にして失敗を乗り越えたのか?
 もったいないので本当は教えたくないのだが、読者諸
君には特別に教えてやることにしよう。
 対人関係における失敗を乗り越える方法。
 それは「正しく謝罪をする」ということである!

「タイミングを逃すな!」

 失敗をし、そのための謝罪をするにあたり、最も重要
なことは何か?
誠実な姿勢?
真摯な態度?
そんなものは何の役にも立たない。
最も重要なことは、タイミングである!
なぜタイミングなのか?
理由は簡単だ。
誤ったタイミングでの謝罪は、効果を発揮しないどこ
ろか、下手をしたら相手を怒らせ、場合によっては「お
しおき」をされることにもなるからである。
ああ……「おしおき」は恐ろしいぞ……。
特にあの炎で焼かれる「おしおき」は……はっ!?
コホン。
諸君らも、タイミングを見計らい、「ここぞ!」とい
う時に間髪をいれず謝罪するといい。

「土下座をしろ!」

 次に謝罪の方法について教えてやろう。
謝罪の方法にはさまざまなものがある。
愛想笑いをしながら、謝罪の言葉を述べる。
軽い失敗をしたときなどは、この程度でもよかろう。
丁寧に頭を下げ、ひたすら謝る。
ある程度取り返しがつくような失敗をしたときは、こ
うした方法で通じる場合が多い。
しかし、僕がお勧めするのは、それらの斜め上を行く
——「土下座」という方法だ!
土下座とは、地面に正座をし、両腕を相手の前に投げ
出して、額を地面にこすりつけるというものである。
この土下座、実に効果的なのだ。
僕はこれで数々の窮地を逃れてきたのだからな。
特に、相手の憐みを誘うようにすると、より効果が高
まる。
適切なタイミングで土下座をしながらの謝罪。
これこそが正しい謝罪の仕方と言える。

「最後に」

 正しい謝罪の仕方については概ね理解してもらえたと
ころで、一言述べておこう。
謝罪とは所詮、失敗を乗り越えるための方法に過ぎな
い。
故に、謝罪によって相手が油断をしたのなら、間髪い
れずそこを突け!
それこそが、生き馬の目を抜くこの社会で成功を勝ち
取るための極意である。
……これで僕の「謝罪論」は終わりだ。
以上に述べてきたことを踏まえて、読者諸君は謝罪に
励むといいだろう。
もちろん、僕への感謝を忘れるな!
では。


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