アンタリア大陸全土を巻き込んだ「創世紀戦争」の終結より半世紀が過ぎようとしていた。
もはや当時の出来事を知る者も少なく、この忌まわしい戦いの記憶は、人々の心から消えさっていた…。
創世紀戦争で皇帝「黒太子」を失ったゲイシル帝国とダークアーマー連合は、その広大な領土を支えきれなくなり、崩壊。帝国の領地は、復興したシルバーアロー勢力によって分割統治された。各地方の領主はシルバーアロー出身の貴族と旧帝国出身の貴族から選出され、旧帝国領に自治体制が確立した。アンタリアは安定に向かいつつあった。
だが、その安定も長くは続かなかった…。
強力に結束していたシルバーアロー連合であったが、突如、東方航路からテュル帝国が侵攻してきたのをきっかけに状況は一変した。まず、極東の宗教国家アスタニアが滅亡。盟主であるペンドラゴン王国も、テュル帝国との戦争が長引き、国力は徐々に衰弱していった。今度はシルバーアローが瓦解寸前になったのである。そして、これら東方の混乱に呼応するかのように、帝国自治領でも領主同士の権力争いが表面化していった。
帝国の民は切望した。黒太子の栄光を再現してくれる英雄の出現を。
そんな中、帝国自治領を再統一し、アンタリア全土をも手中にせんとする野望の持ち主が現れた。彼の名はチェザレ・ボルジア。新たな教義「帝国主神教」を掲げ、枢機卿として帝国領で強大な影響力を持つに至った人物である。人々は、枢機卿こそが望んでいる英雄であると信じた。しかし、帝国の実権を握った彼が始めたことは、敵対する者を異端者や魔女として容赦なく弾圧することだった。
アンタリアは再び暗黒の時代を迎えようとしていた…。
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