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妖炎のメルメラーダ -MERMELADA- 「おい、降りろ」 護送人がディー達に荒々しく命令した。三人が馬車から降りると、門番が、大門を開け始めた。鋭く甲高い開錠音が数回鳴り、ゆっくりと、塔の中が見えてゆく。一陣の砂煙が、大門の動きに応えるかのように舞い、その場の全てを覆って、門から塔の中へと消えた。 「ここがお前達の墓場だ。惨めな死に様にならないよう、しっかりお務めするんだな」 「あら、それはお断りね」 「なに?」 女は唐突にそう言うと、両手で輪を形作った。 「・・・・汝、いかな理由で我が束縛を看過するか。答えよ、妖炎!」 その言葉が終わった瞬間、女の手枷が白く発光し、ぼろりと崩れた。女は魔法使いだった。それも、封印つきの手枷を、いとも簡単に外せるほどの。 「あーあ。自慢の白い肌に、くっきりと跡が残っちゃったわ。ねえ、これ、目立つかしら?」 「きっ貴様!!」 門番が長槍を突きつけると、女は笑みを浮かべ、両腕を真横に突き出した。 「地に依りて、世の誕生を見し者よ。汝が力、その破壊の力、昇華の時は来たり!」 女の手のひらが青と緑に燃え上がる。そして呪文が終わると、それは戒めから解き放たれたように、周囲に爆炎を作った。 爆音。門番や護送人と共に、ディーとモーブは一瞬にして吹っ飛ばされた。モーブは頭を強く打ち、気を失った。ディーは、すぐに気絶はしなかったものの、全身に痛みを感じ、立ち上がることが出来なかった。 「ふっ。やっとここまで来たわね。この大門はそう簡単に通れないと聞いたから、まったく苦労したわ」 ローブをすっかり取り去り、悠然と立っている女の姿が、ディーの網膜に飛び込んできた。弓のような身体をしなやかに構えている。きつい眼の形。ばさっと短く切られた黒髪は、美しく青く艶がかかっている。 「・・・・て、てめえ一体、何者なんだ・・・・」 ディーはふしぶしの痛みをこらえ、やっとのことで声を絞り出した。 「あら、元気のいいこと。・・・・私の名はメルメラーダ。妖炎の魔術師って言う人もいるわ。この塔の財宝を頂きに来たの。覚えておいてね」 「くそっ・・・・ふざけた・・・ことを・・・・!」 メルメラーダの笑い声が、塔に反射してこだまする。 「モーブ・・・・大丈夫か?・・・・メルメラーダ・・・・忘れねえぞ・・・・くそっ・・・・」 爪を地にくい込ませ、立ち上がろうとする努力もむなしく、ディーはとうとう意識を失ってしまった。 |
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