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妖炎のメルメラーダ -MERMELADA- しばらく沈黙が流れた。夜の砂漠は冷気と静寂の世界。瓦礫を踏む車輪の音だけが響いている。 「ねえ、どうして遺跡の発掘なんかを国が厳重に管理しているか。気にならない?」 今度はローブの女から口を開いた。 「国が物事に力を入れる理由は、いつでも一つしかないわ。利益のためよ」 女はディー達へ、歩み寄るようにして言った。 「じゃあ神の塔にある利益って、一体何かしら」 「何が言いてえんだよ」 女の物言いに、ディーはうんざりした。 「うふふ・・・・」 女が窓の外に目を止めた。砂漠を背に、天を貫く建築物が近付いてくる。神の塔だった。 「・・・・財宝があるのよ。それもとてつもなく大きな。ただ、塔には謎や罠が多くて、まともな宝は見つかっていないそうだけど」 「じゃあ、財宝があるって確証は?」 眉唾めいた話を聞く顔をして、ディーは尋ねた。 「今の所、塔に残された文献からしか、財宝に関することはわかっていないわね。でもね、それがなくして、どうして古の民は、あんなに巨大な塔を建てたのかしら」 その言葉につられ、ディーはなにげなく馬車の窓の外を見たが、その瞬間、ディーの視線は神の塔に釘付けになった。 確かにそれは、巨大な建造物だった。根は、一つの街より巨大。しかも頂点は、雲よりも高く霞んでいる。塔を渡る風の唸りが、魔獣の咆哮のように響き渡り、姿と相まって、底知れない威圧感を生み出している。ディーはこんな塔を、未だかつて見たことがなかった。街の監視塔としても、監獄塔としても巨大すぎる。なるほど女の言う通り、昔の人間はいったい何の為に、こんな巨大な塔を建てる必要があったのか。ディーには判らなかった。 (神の塔・・・・神のための塔。本当にそうなのか。財宝が本当にあるとすれば、今の暮らしから逃れることができる・・・・) やがて、埃にまみれた馬車を、塔の錆付いた金属製の大門が見下ろした。護送人が手綱を引くと、馬車馬は長旅に疲労した鳴き声を一つ発して、停止した。 馬車は、神の塔にたどり着いた。 |
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