■クロウ3
暗闇の中に一人の少女がぽつんと立っている。
「またここに来たのね」
見覚えのある真っ暗闇の迷宮。
周りには一切人の気配を感じない空間。
どうしようもないことは既に知っているので
とにかく歩くことにした。
歩くうちに前方に光が射しこまれる。
それに近付くと、どこからか手が差し出された。
その手がこっちにおいでと手招きしている。
かつての私はその手にすがってしまった。
その結果、自身を赤く染めてしまった。
「あなたはもう必要ないの」
そう自分に言い聞かせるように呟いて、
その手を鎌で一蹴した。
また先に進むと、新たに手が差し出される。
この手が優しいことは知っている。
優しいけれどきっと救ってはくれない手。
どうしても受け入れることが出来ずに、
その場から逃げ出してしまう。
心残りではあったが留まることが出来なかった。
だが走り出してしばらくして不意に涙が零れた。
一生このままなんじゃないか?そんな不安が生じる。
自分でも分かっている。
とある少女との出会いで
希望を見出しそうになってしまった自分に。
新たな希望とそれまでの絶望がその場に縛り付ける。
また自分を呼ぶ声が聞こえた。
そして明るい温かい光とともに手が差し出される。
やはり直視出来ずにその手を払ってしまう。
だが払っても再び手の形になって差し出される。
また振り払う。
そんなことを繰り返しているうちに、
払おうとした手が掴まれた。
「もう逃がさないわよ!」
聞き覚えのある声とともに
私の手を強く引いてくれる。
抗うことを諦め、
素直にその手に引かれることにした。
そして視界が光に飲み込まれていった。
「やっと捕まえた!
猫みたいにちょろちょろ逃げ回って……
もう変なとこ行かないでよ?
探すの大変だったんだから!」
元気いっぱいの笑顔が向けられる。
それに対してつい微笑んでしまう。
「……エステルのくせに生意気よ」
そう言いながらも、
相手の手をしっかりと握り返す。
この希望に期待してみることにした。
エステルが憤慨している様を眺め、
周りの仲間達を見渡しながら
エステルの手を逆に引っ張った。
「一緒に行ってあげる!」 |