■青水ユエ
【タイトル】 |
特務支援課の平々凡々な日々 〜夕食〜 |
【作者】 |
青水ユエ |
「ロイドー、みんな集まったよー。」
「よし、それじゃあ……………いただきます!」
『いただきまーす!』
などという食卓風景を見ていると、まるで家族のようだ
とティオは思う。
5歳の時に事件に巻き込まれ、ついに得ることの
できなかった『家族』と言う名の愛情。
その優しさとぬくもりが、確かにここにはあるように
思えた。
血の繋がりもない、全く別々の経歴を持った他人同士
なのに。
「ほら、口の周りにケチャップがついてるぞ。」
ゴシゴシ
「えへへ、ありがとーロイド♪」
キーアが特務支援課の娘の位置なら、ロイドがパパで、
エリィがママ。
優しくて真面目な両親といったところか。
自分はキーアの姉で、課長は不真面目なおじいちゃんで
ランディはお調子者の兄。
ランディの方がロイドより年上ということは、
ひとまずおいといて。
「ランディ。自室を空ける時は、必ず鍵をかけるように
しろ。」
「へ…?何ッスか、突然。」
「キーアがお前のグラビア雑誌を見ていたぞ。」
「キレイなおねーちゃんがいっぱいいたよ!」
「おっ、さすがキー坊! あのお姉さん方の魅力が
わかるなんて、こりゃ将来クロスベル市一の美人に
なるんじゃねえか?」
「そ、そんな本見ちゃダメだろ? キーアにはまだ
早すぎる!」
「早すぎるって…そもそも、女性が読む本でもない
けれど。」
「ロイドは読んでるの?おとなの絵本。」
ぶっ!
「きゃあっ!」
「ロイドさん、汚いです。」
「ご、ごめん。それよりキーア、その言い方は
ちょっと…。」
「何だ。間違ってはないだろう?」
「課長が吹き込んだんですかっ!」
「よーしキー坊、今度俺のとっておき、水着のセクシー
お姉さん大特集号を見せ」
「ラ・ン・ディ・さん? 教育上よろしくない本は
どこかへ隠してくださる?」
「スンマセン俺が悪かったです。だから、さん付けは
カンベンしてください。」
「隠したところで、キーアならすぐ見つけてしまう
でしょう。この際、燃やすというのは?」
「ティオすけ〜っ」
想像した通りの風景がそこにあって、思わずティオは
微笑んだ。 |