■ゆう
「うふふ、できたわ」
レンがエステルたちと家族になってから数日がたち、
レンが料理を二人に披露していた。
「うわー、すっごいおいしそう」
「うん、いいにおいだね」
二人もそれをほめ、おいしそうに食べ始めた。そんな
様子をもじもじとしながら彼女は眺めている。
「……どう、かな?」
その声は二人に聞こえないんじゃないかと思うほど小
さな声だったが、
「すっごくおいしい!」
エステルが即答。
「と、当然よ。レンがつくったものなのよ。おいしいに
決まってるじゃない。エステルの料理なんか比べ物にな
らないわよ」
「むむ、悔しいけどこれには勝てないわね……」
「ふふ、そうに決まってるわ」
彼女は一安心したように笑顔を作った。そしてもう一
人に感想を聞いた。
「ヨシュアもそう思うでしょ、レンの料理のほうがエス
テルのよりおいしいって」
「うん、すっごくおいしいよ。けど僕はエステルの料理
のほうがおいしいって感じる」
「え?」
その瞬間、彼女の顔はとても悲しそうな顔になった。
「味だけ見れば確かにレンの料理のほうがおいしいよ。
でもね、エステルの料理の比べると大きく負けてるとこ
ろがあるんだ。食べてもらう人に、家族にこめる愛情っ
て隠し味がね」
「なによその台詞、すっごくくさいしはずかしいんです
けど」
真顔で言うヨシュアにエステルは少し引き気味に答え
る。
「あい、じょう?」
けれどレンはそれをまじめに捉えていた。
「うん、愛情。レンはまだうまく分からないと思うけど
僕たちと暮らしていけば自然に分かるよ」
「うん、ヨシュアのくさい台詞はともかく、レンもこの
気持ちが分かるよ」
「……ほんとに?」
「嘘なんて言わないわよ、だってレンはもう家族なんだ
から」
二人の暖かな気持ちをまっすぐにぶつけられて愛情が
何なのかレンは少しだけ分かった気がした。 |