■ゆう
ロイドは風邪で寝込んでしまっていた。けれど誰かが
看病に来てくれることもなく一人でずっと寝ているだけ
であった。支援課のみんなは仕事で忙しいし、キーアは
日曜学校である。ツァイトはいるが、いくら賢くとも看
病が出来るわけがない。
「はあ、やっぱり体調管理も仕事のうちだよな。うう、
自業自得だな」
熱にうなされながら今もこうして休むことが仕事と考
えているのだから風邪が治るかどうかも怪しかった。
そうしてまた眠りについていく。
ロイドが目を覚ましたのは少し寒いと感じたのと、煙
草のにおいがしたからだ。
「ん……煙草?」
「お、悪いと思いながら我慢できずに一服させてもらっ
たぜ」
そこにいたのはセルゲイ課長だった。窓を開けて手に
携帯灰皿を持ちながら煙草をくわえていた。
「課長、いったいどうしたんですか」
「なに、部下が風邪で寝込んでるのに上司の俺が仕事サ
ボって暇にしてるのも悪いと思ってな。まあ、目が覚め
たら俺が目の前にいたってんじゃ目覚めが悪いか」
「いえ、そんなことは無いです。ただ、申し訳なくて」
セルゲイは煙草を携帯灰皿に押し込むとベッドの横に
いすを運んでそこに座った。
「で、体調のほうはどうだ」
「だいぶ良くなりました、これも課長のおかげです。あ
りがとうございます」
「いや、俺はほとんど何にもしてねえよ。さっき着たば
っかりだしな。ま、一人くらい誰か残れるくらい仕事を
調節してやれれば良かったんだがな」
「支援要請のほう忙しいんですか」
「ああ、リーダーのお前がいないせいであいつらの指揮
が下がってる。なんとかしたいって思うんならさっさと
風邪を治しやがれ」
「あはは、努力します」
「おう、それじゃあ俺はちょっと出かけてくるかな。も
うそろそろキーアが日曜学校から帰ってくるころだろう
からな」
煙草のにおいも消えたころだろ、と呟きながらいすを
元の場所に戻して窓を閉める。
「それじゃあ後はキーアにでも看病してもらえ。あいつ
をみてれば風邪なんてすっとぶだろ」
「あはは、それもそうですね」
そのままセルゲイは出て行ってしまった。その後すぐ
にキーアが来てロイドの看病を始め、いつもの日常が戻
ってくるのだった。 |