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■紫苑@HIROKI

【タイトル】 決意
【作者】 紫苑@HIROKI

エレボニア帝国、帝都。都会の喧騒と曇天蠢くこの国
で、一人の書記官の物語が始まる。     

「事後処理はこれで終了っと」

彼は今日最後の仕事を終え、そのまま帰り支度をしな
がら、物思いに耽る。その顔色は決していい物ではな
かった。

「レイン君。君は今回の認定試験を主席で合格した期
待の新人だ。でも肝心なことがまだ決まってないね。
君はいったい誰に就くのかね?」

この前教官に言われたことがチクリとレインの心に刺
さる。

「これじゃなんのために書記官になったんだ・・・?」

"コンコン"

「? こんな時間に?」

突然のノック音に少し驚き、足早にドアの方に向か
う。そこでレインを待っていたのは、意外な人物だ
った。

「邪魔するよ。少しいいかね?」

「あなたは・・・宰相閣下ではありませんか! どうし
て自らこんな所に?」

「そんなにかしこまる必要はない。君を私の書記官
にと思ってね」
そういうとギリアスは微笑む

「なんでもこの前の試験でかなり優秀な成績を残した
そうじゃないか。君なら私の元でも十分力を出せるよ

「ちょっと待ってください! いきなりそんな・・・」
「なに、焦る必要はない じっくり考えたまえ」

そういうとギリアスは去っていった。レインは思わず
椅子にヘタれこむ。

「閣下が直々に俺を指名? こんな話、二度とこない
ぞ? 出世への道も遠くない。でも・・・」

レインは祖国の空を見つめる。

「俺は、本当にこんなことがしたかったのか・・・?」

すると、どこからか脳天気な声が聞こえてきた。

「ほぉう、なにやらお困りのようだなァ 後輩よ!」

「のわあっ!?」

突然の声に驚き振り向くと、そこには二階の窓から身
を乗り出している赤毛の青年がいた。

「レクター先輩ですか・・・ 驚かさないでくださいよ」

「いやァ、なにやら神妙な顔つきだったから、思わず
声掛けちまったぜ」

レクターはそういうと、窓から飛び降り華麗にレイン
の隣に着地する。

「困ったときは人に頼る! なんならこの俺様直々に
君の悩みを聞いてしんぜよう!」

「まったく、この人は・・」

と言いつつもレインは自然と口が動き、悩みを吐露し
ていった。

「なるほどぉ、あるお偉いさんに書記官やれって言わ
れたはいいが、はたして自分はそんなんでいいのかっ
て思っちまったわけだ」

レインは俯き気味に肯定する。

「やっぱり就いたほうがいいんでしょうか・・・」

「そんなに固くなるなよ〜 ・・・う〜ん、はっきり
いってこんなにウマイ話はないよなァ コレもやばい
んだろ?」

そういってレクターは指でお金のマークをかたどる。

「でもな・・・」

と急にレクターは真剣な眼差しになり、

「大事なのは、『お前がこの仕事で何をしたいか』じ
ゃないのか?」

「!!」

レインは立ち上がる。そうだ。自分がこの仕事で本当
にしたかったことは・・・。

「ありがとうございます、先輩!」

そういうとレインはなにかすっきりした表情を見せ、
足早に去っていった。

その後、レインはとある二人組と運命の出会いを果た
すことになる。


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