■ぱたごにあ
【タイトル】 |
王子と南の王国 |
【作者】 |
ぱたごにあ |
旅に出た王子が訪れた南の王国。
いつも笑顔がたえない平和なこの町ですが、
今日はなんだかみんなが困っているようです。
「どうしたんだい?」
「ああ、よくぞ聞いてくれました王子。
実はすべての導力が止まってしまって。飛行船も
調理器も、みんな動かなくなってしまったんです。」
「こまったな。せっかく来たのに、
それではおいしい料理が食べられないではないか。」
皇子は意を決し、みんなを困らせている悪者を
懲らしめることにしました。
おそろしい魔物や、不気味な機械人形のうろつく、
高い塔をのぼり、
ついに王子は悪者のところにたどり着きました。
「おまえが悪者だな!みんなが困っている。
はやく導力を元に戻すんだ!」
「ええい、小うるさい王子め。この塩をくらえ!」
「ぺぺっ。うわっ、しょっぱい!」
なんとか王子は防ぐことができましたが、
あまりにもすごい悪者の攻撃に、
一緒に戦ってきた遊撃士の少女も、七耀教会の神父も、
幼馴染の剣士も、みんな倒れてしまいました。
「ごめん、みんな……。」
「あか〜ん、ダメダメや〜。」
「これまで……か。」
「そんな、みんな……。」
大事な仲間を傷つけられて、怒りに震える王子。
ですが怒りや憎しみで敵を倒してはいけません。
「わるものめ。僕の美技に酔いしれろ!」
「ひー。こりゃたまらん。まいったまいった。」
王子の見せた美の真髄に、
たまらず悪者も降参しました。
「よしよし、もうみんなを困らせちゃいけないぞ。」
「はいわかりました。王子様、
お詫びのしるしにこれを受け取ってください。」
そう言って悪者が出したのは、
キラキラと光り輝くきれいな輪っかでした。
「うわー、きれいな輪っかだなあ。
いったいこれは何なんだい?」
「はい。これは女神の宝物のひとつで、
なんでも願いのかなう輪っかです。」
「なんだって!」
めずしく声を荒げると、事もあろうか王子は
その輪っかを半分に折ってしまいました。
「なにをするんですか王子様!」
驚く悪者に、今度はやさしく王子が答えます。
「いいかい、こんなものがあってはだめなんだ。
何かに頼るのではなく、
願いは自分の力で叶えないといけないんだよ。」
「ははー。」
王子のすばらしい言葉に、
悪者も涙を流して感心しました。
「ありがとう、王子様」
「ありがとう、王子様」
王国に戻った王子を待っていたのは、
みんなからの大きな祝福でした。
王子の活躍で戻ったのは導力だけではありません。
みんなの笑顔も戻ったのです。
国民はそんな王子に、
感謝したい気持ちでいっぱいでした。
「おいしい料理を作りました。ぜひ食べてください。」
「お酒もあります。たくさん飲んでください。」
「わあ、ありがとう。でもお酒はいいや。」
その日は、きれいなお姫様や、
一緒に戦った仲間たちと一緒に、
たくさんおいしいものを食べて楽しみました。
「やっぱり、王国の料理は最高だね。」
だけど王子の旅はまだ終わりません。
世界中のみんなが笑って暮らせる日まで続くのです。
おしまい |