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■ぱたごにあ

【タイトル】 相棒との一番長い日
【作者】 ぱたごにあ

 私は警備隊の一員としてクロスベル東の要所、
ここタングラム門に勤めている。
 そして、この部署に配属されてからというもの、
私の相棒は決まって『彼女』が務めていた。

 先日は、その彼女とも親交の深い、
警察の特務支援課と一緒に、
クロスベル中を回る大変な仕事に付き合わされた。
もっともその内容は、本の回収や何かの材料集めなど、
殆どが警備隊はおろか警察本来の任務とも掛け離れた、
つまらない任務だったのだが、
行く先々で掛けられる言葉や、向けられる笑顔を見て、
彼らを深く知り、理解する事が出来たのは、
なかなか面白い経験だったように思う。

 それから暫く経ったある日の夜。
再び特務支援課と連携して事に当たったウルスラ病院
の異変。
その混乱もある程度収束が見えたところで、
私たちは再びクロスベル市内へと向かった。

 やがて前方を疾走する、数台の車両が目に付く。
先頭を走る一台は、派手なリムジン。
そしてそれを追う二台は、ベルガード門に
配備されたという新型車両だろう。無骨なフォルムに、
取って付けたような重火器の数々、
性能はともかくとして個人的に言わせてもらえば、
あまりあのデザインは好きになれない。

 彼女は黙ってそれを追いかけていたが、ふと
意を決したように「……ごめんね」と小さく呟くと、
力強くハンドルを切り、後方の一台に身体をぶつける。
思いもよらぬ行動にはじめは驚いたが、
すぐに彼女の意図を理解する事ができた。
身を挺してあのリムジンを守ろうとしているのだ。
……ならば私のするべきことは決まっている。
ようやく敵と看做されたか、もう一台の車両が
容赦なくガトリング砲を浴びせてくるが、
その程度の攻撃に私は怯みはしない。

「——聞こえますか!ノエル・シーカーです!」
『ああ、聞こえている!』
『ソーニャの秘蔵っ子か……正直助かったぞ……!』
「ふふっ、どういたしまして。
もう一台もこちらが相手をしておきます!
そのまま行ってください!」

 ……あれからずいぶんと時間が経ったように思う。
路肩に停まった私の傍らには、
横たわる新型車両の姿があった。

「無理させちゃってごめんね……」

 ボロボロになった装甲を優しく撫でながら、
彼女は悲しそうに私に言った。これだけの損傷、
もしかしたら彼女とのコンビも
今日で最後になるのかも知れない。
……だけど私は満足している。大切な彼女と、
彼女の想いを守ることが出来たのだから。
剥げた塗装も刻まれた銃創も、今は誇りだ。

「もうすぐ夜明けだね……」

 そう呟く彼女に合わせ、私も空を見上げた。
クロスベルの一番長い日が、
もうじき明けようとしている。そんな黎明の空を見て、
やはり思った事は一緒なのだろう。
再びお互い顔を合わせ、静かに頷く。

『そうだ。"彼ら"を迎えに行こう……』

■ぱたごにあ

【タイトル】 王子と南の王国
【作者】 ぱたごにあ

 旅に出た王子が訪れた南の王国。
いつも笑顔がたえない平和なこの町ですが、
今日はなんだかみんなが困っているようです。

「どうしたんだい?」
「ああ、よくぞ聞いてくれました王子。
実はすべての導力が止まってしまって。飛行船も
調理器も、みんな動かなくなってしまったんです。」
「こまったな。せっかく来たのに、
それではおいしい料理が食べられないではないか。」

 皇子は意を決し、みんなを困らせている悪者を
懲らしめることにしました。

 おそろしい魔物や、不気味な機械人形のうろつく、
高い塔をのぼり、
ついに王子は悪者のところにたどり着きました。

「おまえが悪者だな!みんなが困っている。
はやく導力を元に戻すんだ!」
「ええい、小うるさい王子め。この塩をくらえ!」
「ぺぺっ。うわっ、しょっぱい!」

 なんとか王子は防ぐことができましたが、
あまりにもすごい悪者の攻撃に、
一緒に戦ってきた遊撃士の少女も、七耀教会の神父も、
幼馴染の剣士も、みんな倒れてしまいました。

「ごめん、みんな……。」
「あか〜ん、ダメダメや〜。」
「これまで……か。」

「そんな、みんな……。」
大事な仲間を傷つけられて、怒りに震える王子。
ですが怒りや憎しみで敵を倒してはいけません。
「わるものめ。僕の美技に酔いしれろ!」
「ひー。こりゃたまらん。まいったまいった。」
王子の見せた美の真髄に、
たまらず悪者も降参しました。

「よしよし、もうみんなを困らせちゃいけないぞ。」
「はいわかりました。王子様、
お詫びのしるしにこれを受け取ってください。」

 そう言って悪者が出したのは、
キラキラと光り輝くきれいな輪っかでした。

「うわー、きれいな輪っかだなあ。
いったいこれは何なんだい?」

「はい。これは女神の宝物のひとつで、
なんでも願いのかなう輪っかです。」

「なんだって!」
めずしく声を荒げると、事もあろうか王子は
その輪っかを半分に折ってしまいました。

「なにをするんですか王子様!」
驚く悪者に、今度はやさしく王子が答えます。

「いいかい、こんなものがあってはだめなんだ。
何かに頼るのではなく、
願いは自分の力で叶えないといけないんだよ。」
「ははー。」
王子のすばらしい言葉に、
悪者も涙を流して感心しました。

「ありがとう、王子様」
「ありがとう、王子様」
王国に戻った王子を待っていたのは、
みんなからの大きな祝福でした。
王子の活躍で戻ったのは導力だけではありません。
みんなの笑顔も戻ったのです。

 国民はそんな王子に、
感謝したい気持ちでいっぱいでした。

「おいしい料理を作りました。ぜひ食べてください。」
「お酒もあります。たくさん飲んでください。」
「わあ、ありがとう。でもお酒はいいや。」

 その日は、きれいなお姫様や、
一緒に戦った仲間たちと一緒に、
たくさんおいしいものを食べて楽しみました。
「やっぱり、王国の料理は最高だね。」

 だけど王子の旅はまだ終わりません。
世界中のみんなが笑って暮らせる日まで続くのです。

おしまい


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