■さくら
「はぁ……はぁ……」
乱れた呼吸を整えながら、俺は後悔していた。
何をって?
そりゃぁ昨晩、無謀な賭けに挑んでしまったことを。
まさか、あんなに競争率が高いとは思わなかった。
『じゃぁ、わたしが勝ったら——』
今思えば、どうしてあんな賭けをしたのだろう。
彼女相手に、勝てるはずがないと分かっていたのに。
「あ、ロイドさん……」
声がした方にゆっくりと視線を移す。
そこには、不安そうな表情をした彼女がいた。
俺のことを心配してくれているのか、それとも……。
『ポムっと!で勝負です!』
あっさり負けた。二十連敗。
だから俺は、そのまま徹夜をして並ぶことにした。
限定10個、特別仕様みっしぃのぬいぐるみ。
それを手に入れるために。
「……大丈夫ですか?」
彼女が静かに問う。
それに応えるように俺は、無言でそれを差し出した。
彼女は、ゆっくりと遠慮がちにそれを受け取った。
普段、あまり感情を表に出さない彼女。
けれど、さすがに嬉しいのだろう。
彼女は満面の笑顔で、それを抱きしめた。
『実は一つ、お願いがありまして……』
昨晩の彼女の様子を思い出す。
「ったく……なんだか、妬けるなぁ」
俺は呆れるように、そう呟いた。
「……妬いても無駄です。みっしぃが一番です」
そう彼女は言い、そして言葉を続けた。
「まぁ、そうですね……。ロイドさんは二番目ですね」
彼女はもう一度嬉しそうに、みっしぃを抱きしめた。
「ははは……、そうですか」
俺は、みっしぃ以下ですか。
まぁ、ティオが喜んでくれたなら、それでいいか。
……って、あれ?
みっしぃが相手なら……二番目?
それって——。 |