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■ラギ

【タイトル】 カネモノガタリ
【作者】 ラギ

 ある日、人が来て、話をするんです。

 カネが鳴ります。

 ゴォーンゴォーンゴォーン

「うむ?あれは彼の親か。将来有望、才能人である彼の
。でも彼のやりたかったのは有望なことではないからね
。彼は自分のやりたいことを言い出したら反対されるに
決まってると思って、一言もいってないんだよ。やれや
れ。だからそれを知ってしまうと、親だったらあれが当
然だろう。何て馬鹿なことを考えてるんだ、ってね。
でも誰にも言わず彼自身の願いを、夢を持ち続けた彼
のことだ。それでもそれを捨ててはくれないだろう。
でも誰にも言えず彼自身の願いを、夢を持ち続けた彼
のことだ。あれには耐えられないだろうよ。」

 ある日、人が来て、話をするんです。

 カネが鳴ります。

 ゴォーンゴォーンゴォーン

「今度は大勢だね。あれは見ての通り助けを求めるもの
たち、ということだ。しかしあれは助けを求めるものた
ちの中じゃ、特別な部類だよ。彼女が今まで救わなかっ
たものたちだ。
今まで他人を助けるため一所懸命だった彼女だから、
彼らを助けたいと思うだろう。
今まで他人を助けるため一所懸命だった彼女だからこ
そ、彼らを目の当たりに出来ないだろうよ。」

 ある日、人が来て、話をするんです。

 カネが鳴ります。

 ゴォーンゴォーンゴォーン

「あれか?見ての通り鮫だよ。あの鮫も特別だ。あの鮫
には《生者の心における死の物理的な不可能性》という
名前がある。ある芸術家が作ったものだ。鮫は沈まない
ために寝るときも泳がないと駄目だ。あれはもう死んだ
鮫だが、あの芸術品のように強制的に動かし続けると、
生きてるか死んでるか区別が付かない。
生きたいと願うからこそ、彼はあの鮫が生きてると思
い込むだろう。
死ぬと分かるからこそ、彼はあの鮫に怯えるだろうよ
。」

 カネが鳴ります。

 ゴォーンゴォーンゴォーン

「分かるか?でも他人の話だし、いまいち分かりずらい
かも知れないね。それがどれほどありふれたものであっ
ても、だ。ではもっと分かりやすい話をしようじゃない
か。

君の願い、君の夢は何だい?」


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