■ 暗き沼の魔法使い ■ 沼のほとりでは、小悪魔のウォーターシェリーたちが喧しく騒いでいた。 水精なのに炎を操る変な連中である。 ドラゴン界の古老、フラジオレの手先として、様々な悪事に荷担している。 「ねえねえ、見た? フラジオレ様が連れてきた人間」 「見たよ! 若いメスでしょ?」 「頭が金色のヤツ」 「けっこうかわいいよね」 「そう? 人間なんて、かわいいかなあ。尻尾も羽もないんだよ」 「今の姿の方が、かわいかったりして!」 「今の、って?」 「知らないの? あのメス、ガマになっちゃったんだよ」 「なにそれぇ!?」 「フラジオレ様がさ。『私の妻になりたいなら、ガマになれ』って」 「そんで、ガマになったの? 素直に? 本気?」 「本気本気。フラジオレ様が変身の薬を差し出したら、ごっくん!」 「一気飲みしちゃったのかー……」 「バカだねー。でも、フラジオレ様も何考えてんのかな」 「さあねえ。あの方もお年寄りだから。ちょっとアレなんじゃない?」 「もう空も飛べなくなっちゃったし。イライラしてんのかな」 「腹いせに人間でもいじめようかって? ホントにドラゴンかしらん」 「でもでも、あの人間、どうすんのかな。ガマにしてバカにするだけ?」 「まさか。やっぱり食べるんでしょ」 「人間っておいしいのかなあ?」 「どうだろ。食べたことないから」 「俺たちにも味見させてくんないかな」 「う〜ん、フラジオレ様はケチだからなー……」 「もしかして、あの人間のことが好きなんだったりして」 「ええっ、どうして!?」 「だってさあ。このごろフラジオレ様ったら、人間のオスに化けてるんだよ」 「うそぉ……」 「いかにもメスに好かれそうなオスだよ。あのメスを喜ばせたいって感じ」 「女ドラゴンが相手にしてくれないから?」 「きゃはははは!」 「しっ、あんまり大きな声、出すなよ。噂をすれば何とやら」 「フラジオレ様だ!」 「ヤバい、サボッてたのがバレる!」 「持ち場に戻ろうぜ。ジャックの炎の番をしないと。また、どやされる……」 |
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