≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫

■飛騨道隆

【タイトル】 アントンとリックス 二人は仲良し
【作者】 飛騨道隆

「なぁリックス、こいつを見てくれ。どう思う?」
「すごく……大きな魚だな、アントン。」
 とは言え、リックスは魚に詳しい訳ではないため、そ
の魚が何の種類なのか分からないため適当に答えた。
「そうだろうリックス。さっきそこの路上販売をしてい
た綺麗なお姉さんから購入したのさ。」 
「そうか。それは良かったな。」
「僕がカッコイイから、500ミラに負けてあげるわって、
言ってくれたんだ。これは僕に惚れたってことだね」
「それは……」
 リックスは、それはきっと詐欺に違いない、という
言葉をすんでの所で飲み込む。そもそも元値はいくらだ
ったのだろうか。
 だがリックスは放っておく。絶対面白い事になるに違
いないから。
「だから、明日早速告白に行くよ」
 どうしたらそういう思考回路になるのか。だがそれが
アントンの一番いい所なのだろう。

 翌日。
「見てくれリックス。あそこにお姉さんがいるね。」
「ああ、確かにいるね。」
アントンが先日魚を買ったという路上に来た。
やはり今日も商売しているらしい。 
何故かそのお姉さんの前には魚ではなく壺が置いてあ
るが二人とも何も言わない。
「じゃあ、早速行ってみるよ」
「逝ってこいアントン。ここで見守っていてやるよ」
こっそり近くの木の影に隠れて様子を覗き見る。

「あら、昨日のお兄さん。また来てくれたの?」
「ええと、その……」
「そうそう、今日はこの壺なんだけどね……」
「ぼ、僕と付き合って下さい!」
「……そうねぇ。この壺を買ってくれたら考えてもいい
わよ?」
「ほ、本当ですか!?」
「100万ミラよ。」
「あ、そ、そんなに手持ちはないで、す……」
家に帰ればあるというのかいアントン?
「そう、仕方ないわね……」
しょんぼり項垂れて戻ってくるアントン。

「どうだった、アントン?」
「なぁリックス100万ミラってどのくらいかなぁ……?」
「アントン……」
「なんだい、リックス……?」
流石に親友が借金地獄になるのは忍びない。ここは友
人の役目を果たすか、とリックスは考え、
「あれは詐欺だよアントン。君に付き合う気なんて始め
からないだろうさ」
「な、何を言っているんだいリックス!?そんな訳ない
よ。よしまた何度でも告白するんだ!諦めないぞ!」
「……明日また来てみようアントン」

 さらに翌日。
そこには誰もいなかった。
「リックス……」
「なんだい、アントン?」
「僕、またフラレたのかな?」
「どうだろうな?」
全身から無気力オーラを出してフラフラ歩くアントン。
ああ、君は何処へいくのかい?

「やはり今回も駄目だったよ。あいつは話を聞かないから
なぁ。」


≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫