ダイジェスト 閃の軌跡
このコンテンツには「英雄伝説 閃の軌跡」に関する重大なネタバレが含まれています。
終章「士官学院祭、そして──」
10月──
小旅行から帰ったリィンたちはステージ演奏の猛特訓を始めた。
エリオットとクロウの指導によって濃密で徹底的な練習が繰り返され──
経験者が多かったこともあり、何とか完成に漕ぎ着けたのだった。
そして始まる学院祭の準備日──
リィンは完成した衣装を受け取るため導力バイクで仲間と帝都に向かい……
ブティックで衣装を受け取った後、意外な人物と街角で遭遇する。
帝都歌劇場のスターとして名高き、《蒼の歌姫》ヴィータ・クロチルダ──
導力ラジオの人気パーソナリティ、“ミスティ”としても活動する女性である。
既に知り合いだったリィンは彼女も学院祭のステージに誘うのだった。
そして──
2日に渡る《士官学院祭》が無事開催された。
リィンは生徒会の手伝いをしつつ、空いた時間で仲間たちと様々な出し物を楽しんでゆく。
日が暮れて、いよいよ明日──
ステージの最終的な打ち合わせをリィンたちがしていたその時。
その鐘の音は遠くから響いてきた。
果たして──
鐘が鳴っていたのはリィンたちも馴染み深い旧校舎だった。
サラや学院長たちの許可を得て旧校舎の最下層に足を踏み入れるとあまりに異様な空間が広がっている。
何かの事情を知っているらしきエマ、そして黒猫のセリーヌに導かれ、異変を止めるべく探索を始めるVII組。
そして──
待ち受けていたのは異界の戦場と、巨大な漆黒の影だった。
凄まじい“試練”を乗り越え、漆黒の影に打ち勝ったリィンたち──
目を覚ますと異変は収まっており、全員で安堵していた矢先に眼前にあった扉が音を立てて開く。
そこに“居た”のは巨大な人影──
高さ7アージュにも及ぶ“灰色の騎士人形”だった。
翌日──
士官学院祭2日目。
リィンは騎士人形が気になりつつも訪れた妹のエリゼを案内しながら午前の時間を過ごした。
そして午後──
VII組のステージ。
リィンたちは全力を尽くして3つの曲をやり遂げていき……
最後は観客全員が合唱するという大成功を収めたのだった。
そして後夜祭──
世話になったクロウに改めて礼を言うリィン。
そしてエリゼに促され、親しい仲間と親密な一時を過ごしたその後……
深刻な表情で現れた学院長の言葉が穏やかな空気を凍りつかせた。
東部国境のガレリア要塞が壊滅──
いや“消滅”したと。
一週間後──
かつてない緊張が帝国全体を包み込んでいた。
ガレリア要塞の消滅が属州であるクロスベルからの攻撃であると断定され──
オズボーン宰相による演説が正午に始まろうとしていたのである。
リィンは仲間たちと演説のラジオ中継を聞くことになり──
ミリアムとクロウを探すが結局ミリアムしか見つからなかった。
そして始まる鉄血宰相の演説──
あまりに力強く、あまりに扇動的な演説の行き着く先は決まっていた。
クロスベル及び、その背後にいるカルバード共和国への宣戦布告。
だが、決定的な言葉が紡がれようとしたその瞬間──
雷鳴のような銃声が帝都の空に響き渡った。
左胸に風穴を開けられ、どうと崩れ落ちる鉄血宰相。
大量の血が地面に広がり、狂乱の悲鳴を上げる市民たち。
果たして狙撃したのは鉄鉱山で死んだと思われていた帝国解放戦線リーダー《C》。
その正体は……
《VII組》に一時的に所属するトールズ士官学院の2年生──
クロウ・アームブラストだった。
時を同じくしてリィンたちはラジオ中継を通じてその情景を“目撃する”こととなる。
人気パーソナリティ“ミスティ”の声が聞こえた後、不思議な歌声が響き渡り──
ラジオの前に帝都での情景が鮮やかに浮かび上がったのである。
彼女は、エマが捜していた姉で《深淵の魔女》と呼ばれる恐るべき存在らしかったが……
目の前に広がる衝撃的な光景にそれを考える余裕は無かった。
雲間から現れた白銀に輝く巨大な方舟──
そこから無数の“影”が降下し、帝都全域の制圧を開始する。
現代の導力技術で造られた全高7アージュに及ぶ“騎士”。
貴族勢力が満を持して投入した《機甲兵》であった。
機甲兵たちは、圧倒的な機動力で主力戦車の守備部隊を蹂躙し──
皇城前まで到達することによって帝都の制圧を完了する。
それを指揮していたのはかつてフィーが所属していた猟兵団《西風の旅団》のメンバーだった。
そして──
歌劇場の屋上には皇城に降下する白銀の方舟を眺めるクロチルダの姿があった。
そこに《怪盗紳士》が現れ、《結社》の第二使徒である彼女の手並みの素晴らしさを賞賛する。
それを鷹揚に受けつつ艶然と宣言する《深淵の魔女》。
『オルフェウス最終計画が第二幕、幻焔計画──』
『“第二楽章”を始めましょうか。』
一方──
リィンたちの茫然自失もそう長くは続かなかった。
テロリストの駆る機甲兵部隊がトリスタの街に迫ってきたのである。
西口で機甲兵部隊を迎撃するサラやナイトハルト、学院長たち──
《結社》の人間であることを明かしたシャロンの加勢もあって何とか凌いでゆくが、限界もあった。
そして──
街の東口にも別働隊が迫ってきており……
リィンたちVII組は最後の決意を固めるのだった。
遂に──
VII組の死力を尽くした攻防戦が始まった。
通常タイプの機甲兵、《ドラッケン》の関節を狙い、見事これを停止させたリィンたち。
しかし──
スカーレットが駆る隊長機《シュピーゲル》の前に為す術もなく倒されてしまう。
仲間を守るため“鬼”の力を解放しようとするリィン
『──汝、力を求めるか?』
その時、不思議な声がリィンの脳裏に響き渡った。
凍りついた空間の中で、黒猫のセリーヌが現れ、“彼”の名前を呼ぶよう促す。
そしてリィンは高らかに叫んだ。
『来い──《灰の騎神》ヴァリマール!』
爆音と共に飛来したのは旧校舎地下で発見された灰色の騎士人形だった。
そして《騎神》の胸部──《核》に入り込むリィン。
一瞬にして操作方法を掴み、迫り来る《S》の機甲兵を迎撃する。
そして何とか撃破し、仲間たちも歓声を上げるのだった。
『何か忘れちゃいねえか?』
──聞き覚えのある声が空から降ってきたのはその時だった。
飛来する蒼い影──
リィンが操る《騎神》とよく似た流麗にして圧倒的なオーラの機体。
クロウの駆る機体、《蒼の騎神》オルディーネだった。
頼りになる先輩であると同時に2ヶ月半も共に過ごした仲間──
そんな相手を前に、リィンの心は乱れ、納得行かない感情をクロウにぶつける。
しかしクロウは微苦笑を浮かべつつ、《帝国解放戦線》のリーダーである《C》こそが自分だと切って捨てる。
しかしリィンは納得せず──最後の賭けに打って出るのだった。
『俺が勝ったら戻ってきてもらうぞ!』
仲間たちが見守る中──
《騎神》同士の超越的な戦いの火蓋が切られた。
圧倒的なクロウの《蒼の騎神》──
しかしリィンの《灰の騎神》も死力を尽くして相手の攻撃を凌ぎ、何とか互角の勝負へと持っていく。
そして──
刹那の瞬間を捉え、リィンと《灰の騎神》が吼えた。
『無想破斬』──!
幾重もの斬撃を喰らって、ゆっくりと膝を付く《蒼の騎神》。
『よかった、これで──』
仲間たちの安堵は束の間だった。
次の瞬間、《蒼の騎神》が変形し膨大な霊力を迸らせながらゆらりと《灰の騎神》に近寄る。
気圧されるリィン──
次の瞬間、ただの一撃をもって吹き飛ばされる《灰の騎神》。
朦朧とする意識の中……圧倒的な実力差を思い知りつつ、近づいてくる影に怯むリィン──
『させるか──!』
そこに立ち塞がったのはVII組の、リィンの仲間たちだった。
絶望的な相手を前にして一歩も引かずにリィンを守る──
全てはリィンを逃がすため、そして彼と《灰の騎神》に“可能性”を託すための決断だった。
呆然とするリィンをよそに同乗していたセリーヌが《騎神》に遠くの地への離脱を指示する。
『か、勝手なことを言うなッ!!』
──朦朧としつつも叫ぶリィン。
親しかった仲間の一人が映像越しに別れの言葉を告げる。
“死”すら覚悟してもなお、優しく力強い、愛おしい言葉──
泣きたくなるようなリィンをよそに《灰の騎神》が上昇を開始する。
絶望的な戦いが始まった地上がみるみるうちに遠ざかるのをなす術もなく眺めるしかないリィン。
『やめろ、やめてくれええええッ!』
そんな絶叫が、紅く染まった空にいつまでも、いつまでも響くのだった。