ダイジェスト 閃の軌跡III
このコンテンツには「英雄伝説 閃の軌跡III」に関する重大なネタバレが含まれています。
第4章「赫奕たるヘイムダル」
──夏を迎え、暑さが本格化し始めた7月。
リィンは小要塞を訪れた際、シュミット博士から興味深い話を聞く事になる。
10年前の爆発事故で亡くなった、フランツ・ラインフォルト。
博士の一番弟子であり、アリサの父親である彼が、機甲兵を発明した人物だったという。
その後、発表になった今回の演習先は、夏至祭の時期を迎えた帝都ヘイムダル。
結社や猟兵の動きは見られないが、別の“厄介な勢力”が入りこんでいるらしい。
帝都周辺の警備協力の為、この演習では本校と手分けして対応する事が見込まれていた。
その夜、リィンは旧VII組の仲間に演習先を報告。
ようやく全員の再会を段取れるのだった。
──そして翌日の機甲兵教練では、初めて巨大機甲兵ゴライアスが導入される。
多くの生徒が特殊な操縦に苦戦する中、アルティナは滑らかに操作を試していく。
模擬戦は彼女の相手をVII組のメンバーが務め、巨大機甲兵が小破されて勝敗がつく。
しかし、いつまでもアルティナが降りて来ず、呼びかけにも応答が無い。
すると突然、ゴライアスが不気味な機関音を響かせ再起動した。
弾き飛ばされるユウナ達の機体──騎神に乗りこんだリィンは、ヴァリマールに巨人機内を探知させる。
アルティナはトランス状態に陥り、無意識のまま機体を動かしていた。
攻撃を防ぎつつ、コックピットに打撃を与えるリィン。
その衝撃でアルティナの意識が回復し、無事に暴走も止まるのだった。
……グラウンドに面した木々の影。
浮遊する黒い球体が、彼女の一連の様子を眺めていた。
──波乱の予感を感じつつも、団結を固めるVII組。
同行するオーレリアとシュミットも乗せ、《緋の帝都》へと列車を走らせるのだった。
──演習1日目。
VII組は《ヘイムダル中央駅》へ向かった。
駅構内の鉄道憲兵隊司令所に通され、現地責任者であるレーグニッツ帝都知事と面会。
合同で演習を行う本校の生徒、セドリック皇太子のI組も到着した。
要請書を受け取り、リィン達は『要警戒項目』を確認する。
『現在、帝都内に潜伏中の共和国特殊部隊《ハーキュリーズ》の調査・捕捉・情報収集など。』
綴られた文面に緊張感をもつ生徒達。そこへ扉が開き、1人の男が入ってくる。
《鉄血宰相》ギリアス・オズボーン。
一同に親しげに挨拶すると、オズボーンはリィンに向き直った。
一言だけ言葉を交わす2人。
トールズ両校共、明後日の皇城での祝賀会に出席するよう告げると、宰相は会釈をして立ち去ってしまった。
誇らしげなセドリック達に対し、VII組は突然の出来事に困惑する。
興味深そうにオズボーンを見届けていたアッシュは、不意に走った痛みにさりげなく左目を押さえるのだった。
傲岸不遜な態度の本校生徒と別れ、自分達の担当エリアへ赴くVII組。
各街区を巡回しながら、工作員の手がかりを探していく最中、近郊の街道で、とある人物と遭遇する。
元・トールズ本校の歴史学教官、トマス・ライサンダー。
しかしリィンが知る彼の正式な身分は、守護騎士第二位《匣使い》ライサンダー。
『黒の史書』の謎を追う、教会の人間であった。
その後、帝都競馬場を訪れたリィン達は、支配人から“不気味な咆哮”の話を聞き、地下道探索へ乗りだす。
入り組んだ道を進んだ先、ある一角に《緋いプレロマ草》が生えているのを見つける。
直後に現れた魔煌兵を倒すが、この霊草の出現に、皆に疑問が残る。
ひとまず目につく分をすべて駆除し、出口へ引き返すリィン達。
その途中、淀みなく移動する足音に気づく。
共和国軍の特殊部隊、《ハーキュリーズ》であった。
機を窺い挟み撃ちにするものの、妙に余裕を見せる隊員達。
新型の戦術オーブメントを駆使する彼らを逃がしてしまう。
追跡した先は、行き止まりの広間。
すると立ち往生する一同の前に、以前はリィンにだけ姿を見せていた金髪の少女が、皆に認識できる形で現れた。
彼女が示したヒントで仕掛けを解除し、隊員達の背中を追いかける。
階段を駆け上がり外へ飛び出すと、《ヒンメル霊園》に繋がっていた。
VII組の視線の先には、本校の生徒に捕らえられた隊員、そしてレクター少佐の姿。
この状況に至るまで、レクターによって周到に計算された結果だった。
去って行く本校生徒達を見送り、リィンはVII組を、ある墓石まで案内する。
……クロウ・アームブラスト。
内戦時、《煌魔城》で命を落とした旧VII組の仲間。
全員で祈りを捧げその場を去ろうとした時、ユウナがふと何かを拾い上げる。
装飾が施されたブローチ。刻まれたログナー家の紋章は、アンゼリカの物である事を示していた。
クロウの墓を囲むように、新しい土が露出している事にアッシュが気づく。
その後、演習地に連絡を入れ、墓守の立会いで墓を掘り返したところ、そこには何も入ってはいなかった。
リィンやトワが見た遺体は、すり替えられたダミーだった可能性が浮上する。
特殊部隊については、明日中に拘束するよう政府から通達が届き、さらに気の抜けない状況となった。
懸念すべき事を多々あるものの、“約束”の時間が迫ったリィンは帝都へバイクを走らせる。
待ち合わせ場所には、既にリィン以外のメンバーが揃っていた。
1年半ぶりの全員の再会を祝い、シャロンの手料理を味わいつつ尽きない話題に会話を弾ませる一同。
ひと段落したところで、“本題”に入るのだった。
『帝国の行く末を見極めて、VII組としてどう動くか見定める』
リィン達は、帝国が進もうとしている1つの方向を導き出す。
それは『カルバード共和国への侵攻』。新型列車砲の増産など、目に見えて軍備拡張が進む“表”の現状だった。
その“裏”では、宰相と手を組んだ《黒の工房》が、帝国の古い歴史にまつわる何かを引き起こそうとしている。
少しずつ見えたきた謎の輪郭に、尋常ではない事態が進むのを悟る旧VII組。
“表”においては戦争への流れを食い止め── 同時に“裏”での真実を見極め、災厄を阻止する。
リィンの提示した“大方針”に仲間達は力強く同意した。
──演習2日目。
共和国の特殊部隊は警戒心を強め、大多数が地下道に潜伏した。
オーレリアとランディも生徒を率い、二手に分かれて掃討作戦を決行。
VII組は再び街区を哨戒し、工作員の動向の把握に努めるのだった。
しばらくして、地下道にいるオーレリアとランディからVII組に通信が入る。
特殊部隊の隊員達が、化物じみた力と速度で襲いかかってきたかと思えば、目の前で消え失せてしまった、と。
エマにその原因を教えられたリィン達は、奔流する霊脈の中心点である《帝國博物館》へ赴く。
博物館内を抜け、妖しい光が漏れる階段を降りていくと《地下墓所》に辿り着いた。
辺りに漂う不気味な瘴気によって空間そのものが変容し、《緋いプレロマ草》が一面に生えている。
奥から現れた、奇怪な動きの工作員。攻撃を与えても復活してくる彼らに、再び現れた金髪の少女が符を貼りつける。
ここに来て、少女は《魔女の眷属》の長、《緋色の魔女》ローゼリアと名乗った。
この奥に広がるのは《暗黒竜》の寝所。帝都に充ちた力で受肉した竜が、人の魂を眷族化しているという。
自身の使命を果たす為、寝所へ先行するローゼリア。
追いついた旧VII組と共に、帝都に迫る危機を退けるべくリィン達も門を潜るのだった。
長い回廊を抜け、辿り着いた最奥。
低い唸り声を響かせ立ち上がる暗黒竜に、新旧VII組は総力をあげて挑む。
暴走する暗黒竜に止めを刺す為、リィンは騎神を召喚。
ゼムリアストーンの太刀を振るい、斬撃を食らわせる。
断末魔の叫びを上げる暗黒竜の胴体から、黒い瘴気が漏れ出す。
すかさずローゼリアが魔法陣を展開。白い光に包まれるように、その姿は消え去るのだった。
空間は元の《地下墓所》に戻り、寝所の入口やプレロマ草も消え、妖しげな瘴気も消滅していた。
危機を退けた事に安堵するが、《蒼》のジークフリードが姿を現す。
リィンが前へ進み出ると、ジークフリードは二丁拳銃を構えた。
全員が抱く“ある確信”を証明する為、一騎打ちが始まった。
一歩も引かぬせめぎ合いの後、互いに余力を残して対峙する2人。
顔を隠し、名を変えた青年に、“クロウ”と呼びかけるリィン。
しかしその呼び声も意に介さず、ジークフリードは《蒼の騎神》に乗り、去ってしまうのだった。
──演習3日目。
競馬場構内で、工作員の検挙に貢献したトールズ両校への表彰式が行われた。
寝所での一件は公にされなかったものの、オリヴァルト皇子から労いの言葉をかけられる新旧VII組。
自由行動を許可された分校生徒達は、初日を迎えた夏至祭を大いに楽しむのだった。
リィンは街へ繰り出す前に、クレイグ将軍に呼ばれ彼と対面する。
将軍から語られたのは、オズボーンの過去──そしてリィンの実の母も関係する事だった。
14年前、准将に昇進し、妻子にも恵まれていたオズボーン。
ところが彼を疎ましく思う貴族派将校が、猟兵らしき一団に自宅を襲わせた。
見つかったのは妻の亡骸のみ。オズボーンと5歳の長男は、ついに行方が分からなかった。
その3ヶ月後、唐突に復帰した彼は、《百日戦役》を終結させた功績で宰相に抜擢される。
3ヶ月の間に何があったのか。
その真相は、息子であるリィンにしか迫れない、とクレイグ将軍は言うのだった。
その後、夏至祭を堪能したリィンはトワやVII組の生徒と合流し皇城で開かれる祝賀会へ出席。
プリシラ皇妃やアルフィン皇女を始めとする見知った人達との会話を楽しんだ。
その折、クレアから声をかけられ、ある控え室へ通される。
待っていたのはエレボニア帝国皇帝、ユーゲントIII世だった。
真剣な表情の皇帝は、建国当初からこの国に存在する“呪い”について語る。
質実剛健で誇りを重んじる帝国人が、時に“魔が差した”ように起こしてきた愚行。
皇帝家所有の《黒の史書》の原本には、そういった歴史の陰で引き起こされた事、これから起こる事が記されているという。
人の心を狂わせ、歪める“何か”は、避けようとすればより歪みが大きくなる。
それが、皇帝がこれまで宰相のやり方を止めずにいる理由だった。
話を終え、控え室を出たリィンは、オズボーンから呼び止められる。
“お前も”話があるようだ、と有無を言わさず促してくる宰相と別室へ移動する。
そしてオズボーンは語り出した。
14年前、ユミルへリィンを預けた時、息子やシュバルツァー男爵との絆は完全に断たれたという事。
《四大名門》を敵に回し改革を断行する身にとって、“足枷”は不用だという事を。
オズボーンは続けて、結社の『幻焔計画』について語った。
クロスベルの虚ろなる《幻》でエレボニアの《焔》を呼び起こす──
かつて暗黒の地に存在していた“2つの至宝”。
その相克の果てに生まれた《巨イナル一》。帝国の人、物、歴史の全ては、祝福と呪いの上に成り立っていると。
そう言い終え立ち去ろうとする宰相に、クロウに心臓を撃たれても生きていた訳、自分の左胸の傷との関係を問うリィン。
オズボーンは立ち止まると、どこか優しげな笑みを浮かべて告げた。
14年前、猟兵の襲撃を受けた時……心臓近くを建材で貫かれた息子へ、己のものを移したのだと。
それ以上の答えは“宿題”と言い置き、宰相は今度こそ、部屋から去るのだった。
会場に戻ったリィンは、アッシュの姿が無い事に気づく。
それを聞いて顔色を変えたレクターは、クレアとミリアムを伴い控え室の方向へ。先行する彼らを追い、リィン達も続いた。
一同の耳に届く銃声。勢い良く皇帝の控え室に突入する。
胸から血を流し倒れ伏す皇帝。オズボーンに取り押さえられているのは、執事の変装をしたアッシュだった。
気を失っている彼から、黒い瘴気が発せられている。
凶器と思しき小型拳銃を検分し、ルーファスが冷厳な表情で告げた。
共和国ヴェルヌ社製の火薬式拳銃──検知器にかからない特殊な物であると。